金価格上昇をどうみるかKAMIYAMA Reports(2/3 ページ)

» 2020年08月21日 12時00分 公開
[神山直樹日興アセットマネジメント]
日興アセットマネジメント

コロナ・ショックが解消すれば上昇の持続性は低下:分散効果は発揮

 2015年から2016年にかけて米国の実質金利はマイナス領域にあったが、金価格の上昇は現在ほどではなかった。これは、FRBが2015年12月から政策金利を引き上げ始めたためで、市場参加者は、マイナス金利の常態化ではなく、金利上昇を予想していたと思われる。逆に言えば、今回の上昇が1300米ドル/トロイオンス程度ではなく2000米ドル/トロイオンスに向かったのは、米ドルの実質金利のマイナスが長く続きそうだとの見方が押し上げたといえそうだ。

 つまり、金価格上昇の持続性は、コロナ・ショックの行方に依存する。米国の雇用は回復傾向にあるとはいえ、新型コロナウイルスの陽性者数が増加していることなどから勢いは鈍りつつあり、予想が難しい。サービス部門はソーシャル・ディスタンスを取る必要から落ち込みが目立つが、財の需要については各種補助金の支援もあってそれほど落ち込んでいない。インターネット関連の配信サービスなども好調で、物価全体は安定している。

 それでもFRBが緩和を続けるのは、経済の正常化まで(主に銀行の資金繰りを支援することで)企業の資金繰りを支援する必要があるからだ。FRBの緩和策は、リーマン・ショック時ほど長引かないとしても、2021年まで続きそうだ。

米国の株価指数と金価格

 金価格の上昇は、2021年ごろまで続くかもしれない。米国の物価は下落の兆しを見せずに安定している一方で、FRBは金融システム安定のために緩和を続けるだろう。FRBは、実際の物価上昇率が2%程度のインフレ目標を上回っても容認し、デフレ懸念の払しょくを目指すとみている。

 米国の株価指数と金価格の動きを見ると、2020年に入ってから連動しているようだが、長期で見るとそれほど連動性は高くないことがわかる。これは、株式と金では資金流入の背景が異なることにあるようだ。

 インターネット関連中心にけん引される株価指数と、FRBの政策に支持される金価格は、現時点では偶然同方向に向かっているが、例えばコロナ・ショックの混乱が和らぐと、株価が金を上回るパフォーマンスとなるかもしれない。一方、コロナ・ショックの混乱が長引き、雇用維持のための支援が続けば、株式よりも金が選ばれるかもしれない。これらの特性を生かし、金と株式を同時保有することで、それぞれの価格付けの背景が分散され、ポートフォリオの分散に役立ち続けるとみている。

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