三菱UFJ、三井住友、みずほ、そしてりそな銀行が、個人間の送金手数料を引き下げる検討に入ったと、8月頭に報じられた。新興のキャッシュレスサービス事業者などから、チャージにかかる手数料が高いとたびたび指摘されており、政府もこれを問題視してきていた。
引き下げの時期や額は明らかになっていないが、銀行口座から直接お金を引き落とすJ-Debitの仕組みを使うものとされている。こうした動きについて、直接の影響があるキャッシュレスサービス事業者はどう見ているのか。
さまざまなフィンテック事業者が参加するFintech協会の理事である神田潤一氏に聞いた。神田氏は、マネーフォワードの執行役員も務めている。
――銀行が手数料引き下げに至った背景は?
神田氏 銀行間手数料の引き下げ報道が出ているが、もともとは春に公正取引委員会が出したレポートが今の動きにつながっている。公取のレポートから、政府の未来投資会議での議論や全銀ネットの決済インフラの抜本的な見直しに入り、直接的には銀行のインフラをどうするのか、対応することになった。
(銀行間の送金を行う)全銀ネットの、次世代のありかたを検討するタスクフォースが6月に立ち上がっている。関係者が3回会合を重ねており、そこで続けて議論をしていく。当面の大事なアクションだ。
一方、これらであまりに抜本的な変革が出てしまうと、銀行としては対応がたいへんだ。(今回の手数料引き下げの動きは)既存のインフラを活用して銀行が主導権を握れる対応をできないか、ということで、できることを打ち出してアピールする面があるのではないか。
取り組み自体は、銀行間の決済手数料の引き下げにつながり、スピーディーで評価できる面はある。ただしどのくらい下がるのか、どのくらいのスケジュールで進めていくのか、参加していく銀行やフィンテック事業者への広がりが見えてこない。
――手数料はどのくらい問題だったのか?
神田氏 公正取引委員会の2つのレポートで共通している指摘は、1件いくらで手数料がかかってしまうと、取引が進まなくなってしまうということだ。ネットの時代は情報が流通していく中で付加価値が生まれていく。ここがスムーズにいかないと、商品やビジネスのやりとりが滞る。
少額で高頻度の決済をしたり、お金が動く中で付加価値を生んでいったりという時代に対して、1件いくらは妨げになる。いまの時代のユーザーのニーズ、全世界のスタンダードからは遅れている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング