クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2020年08月31日 07時00分 公開

日本勢の華麗なる反撃 アイサイトX池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

[池田直渡,ITmedia]

 しかも黒船テスラが、オートパイロットだの、完全自動運転だのを、日本のメーカーの常識を覆して大胆に主張して、あたかもテスラだけが圧倒的に自動運転技術をリードしているかのようなイメージができてしまった。

 モラルに鑑みて抑制的なアナウンスをしてきた日本の自動車メーカーと対比的に、テスラの情報発信には「自動運転」という単語が極めて放埒(ほうらつ)にちりばめられる。しかしながらその実態を見ると、例えばModel Sは、ソフトウェアアップデートによっていずれ完全自動運転になると主張し、そのオプションを販売していたが、モデルライフ中にそれが達成されるかどうかはかなり怪しくなってきている。

 そして現実に事故が起きた時、テスラは「搭載システムは自動運転ではなく、事故は機能を勘違いしたドライバーの責任である」と公式にアナウンスした。テスラの商標である「オートパイロット」はレベル3以上の自動運転ではないから、それは究極的にはウソではない。しかし商品を売る時に誇大広告的に盛り込まれた「完全自動運転」と言う文言でミスリードしているのもまた事実で、まさに日本のメーカーが危惧した通りの形になったわけだ。

 という中で、スバルは社風そのものの生真面目さの影響もあり、「万が一にも自動運転だと勘違いさせることのないように」最大限の留意を持って、機能を追加していた。例えばツーリングアシストのステアリング補助は、ドライバーが数秒に一度ステアリングを操作しないと切れてしまう設定だった。おかげで、操作の必要ないシチュエーションでも、時折ステアリングコラムのトルクセンサーが反応する程度にステアリングを切ってやらないと、警告されてしまう有様で、ただまっすぐ走るにもかかわらず、微細領域ながらも無駄に蛇行させることになっていた。機能説明が抑制的だという意味で、思想的にはとても同意できるものだったが、一方でインタフェースとしては、課題があったのも事実だ。

 このあたりはすごくデリケートで難しい問題だったのだが、テスラとスバルは両極的な意味で、ADASの理想と距離ができてしまっていたのも事実である。

 そういう諸問題を解決し、使いやすく便利で、なおかつモラル的な逸脱をしっかり抑制したADASへと生まれ変わったのが、今回デビューしたアイサイトXだ。また大袈裟(おおげさ)だといわれるのを覚悟して書くが、アイサイトXは、2020年の時点では世界最高のADASだといえるし、少なくとも市販モデルに搭載されたシステムとしては、最も自動運転に近づいたシステムである。

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