仮想通貨の喪は明けたのか? テレビCM再開のbitFlyerに聞く(2/3 ページ)

» 2020年09月02日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

金融庁が続々と業務改善命令

 コインチェックの流出事件以後、規制当局である金融庁は仮想通貨交換業者に次々と業務改善命令を出していく。18年1月29日にコインチェックに「経営管理態勢の強化等」の業務改善命令を出したのを皮切りに、29もの業務改善命令が出された。中には、業務停止命令も含まれている。bitFlyerも6月に「経営体制の抜本的な見直し等」といった業務改善命令を受けた。

金融庁が仮想通貨交換業者に行った業務改善命令

 「当社含む多くの事業者が業務改善命令を受けた。仮想通貨交換業はゼロから始まったベンチャーがほとんどだったので、金融機関としての内部管理体制の確立が遅れていた」と金光氏は当時を振り返る。

 そこには、金融庁と交換業者の温度感の違いもあったようだ。金融庁側が相手をしてきたのは基本的に金融機関の人たちだ。一方で、仮想通貨ベンチャーのバックボーンは、金融ではなくIT。金融庁が求める内容は理解していても、そのスピード感にはすれ違いもあった。

 こうした中、bitFlyerはじめ複数社は自主的に新規顧客の受け入れをいったん停止し、事業拡大から内部体制の整備にかじを切った。「外部から見てどうか? というところをより気にして見ていった」と金光氏がいうように、セキュリティ体制に自信があっても、それを外部に理解してもらい、信頼してもらえるかが非常に重要になった時期だ。

 bitFlyerが受けた業務改善命令が解除され、新規口座開設を再開したのは19年7月。実に1年ものあいだ、体制構築に費やしたことになる。

定常モードに戻り、アクセルを踏む

 新規口座開設再開が、bitFlyerにとっては1つの転機となった。「新規のお客さまを取っていなかったので、あらためて事業を回せることを証明する時間も必要だった。10月から広告活動を再開。定常モードに入ってきて、アクセルを踏んでいこうと考えた」。事業戦略本部 本部長の永沢岳志執行役員はこう話す。

 ビットコインの価格は17年12月に200万円を超えたが、18年1月の流出事件以後、ジリジリと値を下げた。18年11月には最高値の4分の1以下となる50万円を切るところまで下がった。しかし、19年に入ってから徐々に価格は戻り、19年6月には100万円を回復するところまで来た。

ビットコインの価格は17年末に、一時230万円まで上昇したが、年が明けて急落。19年は価格50万円以下で始まり、bitFlyerが新規口座開設を再開した7月には120万円まで回復した(チャート=bitFlyer)

 仮想通貨全体の時価総額のうち約6割を占めるビットコインは、仮想通貨全体に対する期待を表しているともいえる。業界としても、価格的にも、仮想通貨は最悪の時期を脱しつつあった。

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