19年の10月からWeb広告などは再開したbitFlyerだが、テレビCMの放映に至る道は容易ではなかった。19年11月からテレビCM放映に向けて動き始めたというが、放映が実現したのは20年5月。半年の間、各所との調整に動いた。
「テレビ局も慎重な姿勢だった。そこを乗り越えるために、(仮想通貨交換業者の)自主規制団体がガイドラインを作って、テレビ局ごとに業態考査を行う。1つずつつぶして懸念をクリアしていった。最後に表現考査を経て、流すに至った」と永沢氏は振り返る。
3種類作成したCMでは、うち2種類で「コールドウォレット」「マルチシグ」というセキュリティの仕組みについて訴求した。バブル的な価格上昇と大規模な流出事件で、仮想通貨という言葉を知っている人は爆発的に増えた。一方で、「怪しいのではないか」「流出不安があるのではないか」という人に向けて、不安の解消を目指した。
「オフラインで保管するコールドウォレットからの流出事件はほとんどない。ハッキングでは難しい。現在、当社をはじめ、各社は事実上ほぼ100%がコールドウォレットで保存していると聞く。そういった体制もできてきている」(金光氏)。しかし世の中の漠然とした不安は払拭されていないからだ。
ちょうどCMを流した5月は、1日に仮想通貨にかかわる改正資金決済法と改正金融商品取引法が施行となった。4年に一度となるビットコインの半減期も到来した。コロナショックで大きく値を下げたビットコインも、こうしたイベントが重なり価格が上昇。8月に入ってからは120万円を超えるところまで回復している。
内部体制の構築が追いつかないほどのペースで急速に市場が拡大した17年。18年1月の流出事件を経てからの2年間、bitFlyerをはじめ業界は体制の確立と、信頼回復に努めてきた。目立ったことはやってはいけないというような空気は、徐々に変わりつつある。永沢氏は、この期間を振り返り、今後に向けての抱負をこう話した。
「テレビCMを出せたのが、2年やってきたことの成果の1つ。顧客保護などお客さまをしっかり扱える体制が整ってきた。全力でやっていいと思っている。日本の雰囲気を変えていきたい」
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