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「代表者が常に会社にいる必要はあるのか」 CEOが屋久島からリモート勤務、クラッソーネの挑戦コミュニケーションが消えない工夫(1/2 ページ)

» 2020年09月10日 07時00分 公開
[人事実務]

人事月刊誌『人事実務』〜これからの働き方とキャリア形成〜

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 『人事実務』誌は、産労総合研究所(創立1938年)が発行する人事専門情報誌です。

 見本誌はWebで閲覧できます。

                 

【『人事実務』の特徴】

・先進企業の取り組みを毎号3〜5事例掲載

・本誌でしか読めない独自調査を掲載

               

 本記事は『人事実務』(2020年7月号)連載「働き方改革の現場から」第33回「クラッソーネ リモート勤務でも働くクルー同士のつながりをサポート」を一部抜粋、要約して掲載したものです。

 当該号はこちらからご購入いただけます。


 クラッソーネは2011年設立、解体工事や外構・エクステリア工事などのマッチングサービスを行う企業だ。オンラインで解体工事見積もりを行うプラットフォーム「くらそうね」をこの春全国展開した。本社のある名古屋に加えて、東京、屋久島の計3カ所に拠点を構え、理念「豊かな暮らしで人々を笑顔に」を軸にユニークな施策を導入している。

誇りをもって働ける環境作り

 同社はユニークな制度を多数もっているが、その根底には「人間らしく働いてほしい」という思いがある。誇りを持って働けること、誇りを持った相手とチームで働けること、などである。具体的に、働き方に関する制度をいくつか紹介しよう。

Good&New

 毎日午後1時30分から約15分、毎回5〜6人ずつランダムに組み合わせたグループで「24 時間以内にあった良い出来事」を共有し合う。

 「これは創業直後から、会社に居場所を作ることを考えて始めたものです。クルーがそれぞれ人生の時間を会社に売ってくれていると考えると、会社からお金以外のものも提供したいと思いました。それは自己実現だったり、ここに来れば仲間がいるという安心感だったりです。雑談をすればいいと思われるかもしれませんが、制度であることも大事だと思っています」と代表取締役CEOの川口哲平さんは説明する。

 CHRO(人事最高責任者)として人事を担当する宮田ゆかりさんも「新入社員や中途採用で新しい人が入ってきた際、この制度が有効に機能しています」と手応えを感じている。雇用形態や職種が違っても、会社のクルー全員と話す機会ができるため、チームの一員となるスピードが速いのだという。

 リモート勤務体制となってからも、このGood&Newはオンラインで行っている。「オフラインでは毎回くじ引きをしていましたが、Zoomの機能(ブレイクアウトルーム機能)で同じように小グループへの組分けが行えます。また、名古屋と東京の拠点を超えた全クルーで話すことができるようになったというメリットもありました」(宮田さん)

photo オフラインでのGood&Newの様子

クラッソーネドル

 社内通貨制度で、毎週2枚ずつコイン「クラッソーネドル」が手渡しで配布され、感謝を伝える際に相手に手渡す。受け取ったコインは1 枚50 円換算で社内で軽食などの購入に充てることができる。「厳密な管理をしているわけではありませんが、配布されたコインをそのまま支払いに利用することはできず、他クルーから感謝とともに渡されたクラッソーネドルが利用可能です」(宮田さん)。なお、取材時点では、在宅勤務になっているため、運用を停止している。

豊かな暮らし休暇

 「豊かな暮らし休暇」は法定の年次有給休暇とは別の特別休暇として、有給が3日、無給が2日の計5日を取得することができる制度だ。家族のイベント、自己研鑽(けんさん)、趣味など「豊かな暮らし」につながることであれば、どんな事由でも取得できる。

 「もともとは年次有給休暇の使い方として、家族の誕生日などに取れる休暇制度があったのですが、一人暮らしの人には使いにくいものでした。そこで、全クルーが公平にとれるよう、リニューアルしました」(宮田さん)

 この休暇をそれぞれのクルーが「豊かな暮らし」について考えてもらうきっかけとしてほしいという思いがある。同社の理念を伝える施策の一環である。

コロナ対応でリモートへ移行

 同社でも、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、早々に全社的に在宅勤務へ移行した。また5 月からは、在宅勤務者の通勤手当を不支給とする一方で、水道光熱費の実費補填(ほてん)分として月5000 円の在宅勤務手当を支給している。

 リモート勤務のための環境整備として、各クルー自宅の通信環境、家庭の事情についてもヒアリングを行い状況や要望を把握。実際に在宅勤務に移行する前に事前シミュレーションも行い、環境面の課題を整備した。

 社内の連絡手段としてはSlackが導入されていたが、加えてオンラインミーティングツールとしてZoom も全社導入。カスタマーサクセス部門では電話業務も多いが、電話システムにCTI を活用していたため、社外でも電話業務は可能だった。しかし実際に自宅から業務が行えるのか社内でも検証を行い、問題点を解決したうえで移行した。

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 「業務の質については、ほとんど落ちていないと判断しています」と宮田さんは言う。

 「ただ、ちょうど、在宅勤務に切り替えた時期と新サービスの全国展開を始めるタイミングが重なりました。4月から新入社員も交えて新しいチームで新しい仕事が始まったわけです。どうにか乗り越えましたが、仕組みを整えるまではオフライン(オフィス勤務)のほうがよいと感じた局面はありました。

 クルーや現場の責任者の声をまとめたところ、もともとオフラインで仕組みや体制ができていたチームは、オンラインでもスムーズに仕事ができましたが、新しいチームで新しい仕組みを作っていく場合は、オフラインが有効のようです」

新入社員もリモートで配属

 今年4月に入社した6 人の新入社員もリモート勤務となった。

 「当初、新人研修として社会人としての心構えやマナー、実務の基礎、チームプレゼンなど1カ月程度のプログラムを準備していたのですが、急きょスケジュールを組み直して1週間ほどに圧縮しました。4月8日のリモート勤務切替えまでに集中してマインドセットやビジネススキルをインプットし、実務のロールプレイングまで実施しました。1週間の対面研修で基礎固めができたので、リモート勤務に移行してからも比較的にスムーズに業務ができました」(宮田さん)

 しかし入社早々のリモート勤務であったため、精神面のサポートが必要と考え、「メンタリング」を始めた。

 人事やマネジャーなどから6人がメンターとなり、交代で新入社員と1対1のZoom面談を行う。業務上の悩みや業務以外の人間関係など、あらゆる悩みや思いを聞いてコーチングやアドバイスをする。入社直後は毎日15分から30分、段階的に頻度は減らし、取材時点では週に2 回ほどの頻度で行っている。

 通常メンター制度では、メンターとメンティの組み合わせは固定とすることが多いが、同社ではあえて固定せずローテーションとしている。

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