メガネスーパーが「リモートでメガネ作り」を導入できた理由「近づけない、集めない」時代を生き抜く、企業の知恵(3/3 ページ)

» 2020年09月18日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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 検査はまず、画面越しの視力測定から始まる。スタッフが画面に表示する視力検査表の大きさを調整した上で、視力測定をして状態を確認する。ここまでは、通常のコンシェルジュサービスでも行っているサービスだが、この視力測定だけでは遠近の視力しか分からないことから、新しい度数を検出するメガネ作りはできなかった。

 視力測定後、送付した検査キットの機器を操作してもらう。まずは今使っているメガネをレンズメーターに差し込んで度数を計測。そして、レフラクターと呼ばれる機器を実際にのぞき込んで、内部に浮かび上がる画像を見ながら機器のダイヤル調整を繰り返す。そうすると、左右それぞれの遠・近・乱視などの数値が出る。その数値をもとに、さまざまな度数のレンズがセットされたフォロプターを使い、最も合う度数のレンズを見つける。

視力検査で使用する機器。手前右がレフラクター、左がフォロプター

 メガネを購入する場合は、コンシェルジュがそのまま店舗と通話をつないでくれる。店頭にいるスタッフと話しながら、フレームなどを選ぶことができる。試着を希望する場合も、試着用フレームを5本まで送付してもらうことが可能だ。

 ここまで、顧客とコミュニケーションを取りながら1時間ほどで作業が完了するという。サービス料金は税別4000円(送料、サポート費を含む)。

メガネの度数を計測するレンズメーター

店舗がない地域にもサービス提供が可能に

 リモートサービスに慣れた人の利用が多いように思えるが、利用者の年齢層は幅広い。高齢の親のために申し込む人も多いほか、小学生の子どもが利用するケースもあった。また、店舗の出張訪問サービスでも対応できないような遠隔地を含め、全国から予約が入っているという。

 実際にコンシェルジュとして対応する、アイケア事業本部R&Dグループのジェネラルマネジャー、吉野正夫氏は「店舗がないエリアなど、本当に困っている人のところに訪問できないことが課題だった。(リモートサービスによって)近くに店舗がないお客さまにも商品を届けられたら」と話す。

 本社の部長以上の役職者が直接顧客と話すことは、あらためて客と向き合うきっかけにもなっているという。悩みや要望など、込み入った話を直に聞くことで、新たなサービスにつながる発見もある。コロナ禍の不便を解消するために始まったリモートサービスが、新しい顧客層の開拓や、潜在的な顧客ニーズの発見にもつながっているようだ。

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