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調達購買業務のDXは進むのか関心は高いけれど(2/3 ページ)

» 2020年09月20日 07時43分 公開
[野町直弘INSIGHT NOW!]
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 このようなことから考えると、コロナは正に調達購買部門のDX進展のきっかけになると言えるでしょう。

 しかし、調達購買部門のIT活用はこの20年程度、ほとんど発展が見られません。しいてあげればEDIの発展普及、インターネットの活用、間接材購買システムの導入が進展した程度です。2000年代の初めに購買品やサプライヤに関するさまざまなデータを収集し、そのデータを活用し、分析を行い、様々な戦略やコスト削減活動につなげるというCSM(コンポーネンツ・サプライヤ・マネジメント)というITツールが出てきましたが、これはほとんど普及しませんでした。

 調達購買のコア業務と言われるソーシングプロセスの標準化、自動化のための、いわゆるe-RFxツールもほとんど活用されておらず、いまだにメールと添付ファイルで見積りのやり取りが行われているのが実情です。

 このように調達購買業務における実行系、情報系のIT活用は20年前から止まっていました。それが今回のウィズコロナの影響により、否応なくIT活用やDXが進んでいくと考えられます。

 それでは、調達購買部門のDXは今後、どのように進んでいくでしょうか。短期・中期・長期の視点で考えてみましょう。

 短期的には働き方改革やテレワークに伴う、ペーパーレスやプロセスの自動化などを目的にRPA(プロセスオートメーション)、電子決裁、電子契約、文書管理、などの仕組みの導入活用が進むと考えます。これは現状のシステムでは完全なペーパーレスやオートメーションができていない企業が、あまりにも多く、まずは現状ITでは、カバーしきれていないプロセスや紙を介した業務を改善するというのが狙いです。

 中期的には、購買情報(品目、コスト明細、サプライヤー、人材スキル、市況、為替、など)の共有と活用を進める情報系システムの導入・活用が進むでしょう。具体的には列挙したようなデータの、情報収集→分析→提案→意思決定のスピードアップが進みます。またここでは、過去の意思決定ロジックを参照するようなAI活用も、進んでいくでしょう。具体的には、価格の自動査定やサプライヤの自動選定、コンプライアンス確保のためのAIによる監査などが上げられます。

 長期的には、調達システムのパッケージ化(情報系、実行系共に)が進むとともに、バリューチェーン全体での最適化を図るような営業見積、予算策定、仮見積取得、予算管理、からBS/PL連携、キャッシュフロー改善までの、全社システムとの連携が一層進展していくでしょう。それと共に、調達機能のユーザーへの権限移譲が進んでいくと考えます。

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