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» 2020年09月29日 07時00分 公開

定年延長など、高年齢者の雇用拡大政策は新卒採用にどのような影響を与えるだろうか?(1/2 ページ)

新型コロナウイルスの影響で今後景気が後退すると、高齢者と若年者の間の雇用は代替性が強くなる可能性が高まり、高齢者の就業により若者の採用が抑制される「置き換え効果」が起きる恐れがある。

[ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

本記事は、ニッセイ基礎研究所「定年延長等、高年齢者の雇用拡大政策は新卒採用にどのような影響を与えるだろうか?」(2020年9月14日掲載、生活研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金明中)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。


政府が70歳雇用を推進

 1970年代までには55歳が一般的だった日本の定年年齢は、平均寿命の上昇や出生数の減少による労働力不足などの影響によって、継続的に引き上げられてきた。政府は高年齢者雇用安定法を改正することで、1985年に60歳定年を努力義務とし、1994年には法を改正して60歳定年を義務化する規定を設け、1998年からは60歳定年を施行した。その後、2006年には高年齢者雇用安定法を再度改正して65歳までの継続雇用を義務化する規定を設け、2013年から施行している。

 さらに、今年の3月31日には希望する人が70歳まで働けるよう、企業に就業機会確保の努力義務を課すことを柱とした高年齢者雇用安定法の改正案が、参院本会議で自民党などの賛成多数により可決、成立した。改正案は、健康な高齢者の働き手を増やし、人手不足に対応するとともに、年金などの社会保障の担い手を厚くすることを目的としており、2021年4月から施行されることになっている。

 現行法では、定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために、(1)定年制の廃止、(2)65歳までの定年の引き上げ、(3)65歳までの継続雇用制度(再雇用制度)の導入のうち、いずれかの措置を実施することを義務化している。

 今回の改正案では、(2)や(3)の年齢を70歳までに引き上げた。さらに、企業が上記の三つの選択肢に加えて、社外でも就労機会が得られるように、(4)起業やフリーランスを希望する人への業務委託(請負)(5)有償ボランティアなど自社が関わる社会貢献事業に従事という選択肢も追加した。

高年齢者と新卒者の雇用の現状

 政府の高年齢者雇用推進政策により、労働市場に参加する高年齢者は年々増加している。60〜64歳と65歳以上の就業率は、高年齢者雇用安定法が改正された2006年の52.6%(397万人)と19.4%(395万人)から2019年には70.3%(508万人)と24.9%(784万人)まで上昇した。60歳以上の就業者数は13年間で500万人近く増加したことが分かる。

 一方、20〜24歳と25〜29歳の就業率は2006年の64.2%(472万人)と80.0%(656万人)から2019年には72.4%(457万人)と86.7%(533万人)まで上昇しているが、就業者数は絶対数の減少により13年間で1,128万人から990万人と138万人も減少した。

 少子化が若者の絶対数の減少につながったことや景気が少しずつ回復していることなどの影響を受け、新卒者の就職率は年々上昇傾向にある。文部科学省が2019年12月に発表した「学校基本調査」によると、2019年度の大学卒業者に占める就業者の割合は78.0%まで上昇した。また、文部科学省と厚生労働省が今年6月に発表した2020年春に卒業した大学生の4月1日時点における就職希望者の就職率は98.0%と、1997年の調査開始以来最高となった。

高齢者の雇用推進が新規採用や若年者の雇用に与える影響

 では、定年延長を含めた高年齢者の雇用確保措置は、新規学卒採用や若年者の雇用にどのような影響を与えるのか。この点に関する議論は、(1)高年齢者の雇用確保措置は若年者雇用を抑制するという主張と、(2)高年齢者の雇用確保措置は若年者雇用を抑制しないという相反する主張に分かれる。

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