コラム
» 2020年09月30日 05時00分 公開

本当に大丈夫? 菅首相の「地銀再編」発言が、再び“失われた10年”を呼びそうな理由「第4のメガバンク」構想も難しそう(3/5 ページ)

[大関暁夫,ITmedia]

 若き時代の菅議員が師と仰いできたのが、自民党幹事長を務めた故梶山静六氏。梶山弘志現経済産業大臣の実父です。菅首相は、旧小渕派時代には派閥の長である小渕恵三氏に反旗を翻し自民党総裁選に出馬した梶山静六氏を支援すべく、氏に従い派閥を脱退するほどの信奉者であったと聞きます。

現経産相の父、梶山静六氏と懇意だった菅首相(画像は梶山弘志経産相、出所:経済産業省公式Webサイト)

 ところがこの梶山静六氏ですが、自身の官房長官時代に自民党への献金中止を公表した銀行団を以降目の敵として銀行界に対する批判的な言動を繰り返し、「不要な金融機関は退場させてでも不良債権処理を積極的に進める」というハードランディング路線を主張します。大手行の経営者方が貸し渋り問題で国会に招致された折に、大野木克信日本長期信用銀行(長銀、現新生銀行)頭取の「当行は貸し渋りとは無縁です」という発言に梶山静六氏は激怒。大蔵省から長銀の不良債権資料をマスコミにリークさせ、長銀破綻のトリガーを引いた張本人であるという話を、当時大蔵省回りを担当していた私は同省のキャリア官僚から聞いているのです。

 「銀行憎し」という個人的感情に根差し銀行を悪者にした不良債権処理ハードランディング路線は、金融素人の人気取り的金融行政への横やりの域を出ず、そのとばっちりで起きた長銀の経営破綻により金融不安は全国にまん延しました。経営基盤の弱い一部地方銀行では預金の取り付け騒ぎにまで波及して、足利銀行などはその影響で連鎖的に経営破綻に追い込まれたといえます。

 それ以前にも山一證券、北海道拓殖銀行の経営破綻はあったものの、「絶対につぶれない」と誰もが思っていた大手の超エリート銀行であった長銀の経営破綻の衝撃はその比ではなく、庶民の不安心理や先行き不透明感を醸成して不況を長引かせた影響の大きさははかり知れません。結果的に、素人考えの金融ハードランディング路線が不要に長期の不況をもたらし、金融危機に端を発した「失われた10年」を演出することとなったわけなのです。

 当時、金融危機の情勢不安の中で都市銀行の整理統合を検討していた先のキャリア官僚氏は、「今の流れで地銀の再編もあるのか」と尋ねた私にこんな回答を返してくれました。

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