コラム
» 2020年09月30日 05時00分 公開

本当に大丈夫? 菅首相の「地銀再編」発言が、再び“失われた10年”を呼びそうな理由「第4のメガバンク」構想も難しそう(4/5 ページ)

[大関暁夫,ITmedia]

 「規模の大きい都市銀行は、その統合によって効率化効果と規模拡大のメリットが十分期待できるが、規模が小さい地銀の場合はそうはいかない。しかも、統合後の難しいかじ取りができる優秀な経営陣がリードしている地銀など数えるほどしかなく、金融行政が統合後の明確な道筋を提示せずして今地銀の再編を強引に進めることは連鎖倒産にもなりかねない。そうなったら日本各地で金融不安が勃発し、最悪日本中が大恐慌に巻き込まれることまでありうる。まずは不良債権処理が今の地銀の最優先課題であり、再編は10年先の話だ」

 その後大蔵省から金融行政を切り離し生まれた金融監督庁(現金融庁)は、地銀の不良債権処理を強力に推し進め経営の健全化こそ図れたものの、キャリア官僚氏が話していた10年後の地銀再編への動きは実現しませんでした。最大の理由は09年のリーマンショック勃発です。結果として金融危機から20年、いくつかの経営統合はあったものの、大半の地銀は再編を生き残り策の選択肢とせぬまま今に至っているのです。繰り返しますがその最大の理由は、仮に経営統合をしても「統合後の明確な道筋が見えない」からなのです。

さらなる金融不安にならないために

 「統合後の明確な道筋の提示」の必要性は、地銀経営者たちだけでなく20年前の時点で既に先のキャリア官僚氏も口にしていたものでした。金融庁が地銀再編の必要性を強調し始めた数年前、その必要性を理解していた当時の金融庁長官である森信親氏は「スルガ銀行のビジネスモデルが、あるべき今後の地銀の姿の一つ」と地銀トップたちを前に発言しました。しかし程なく、スルガ銀行の見かけ上の高収益ビジネスモデルは不動産がらみの不正融資に支えられていたことが分かり、この「理想モデル提示」は水泡に帰してしまったのです。金融庁はこの1件があってから、「羹(あつもの)に懲りてなますを吹く」よろしく、「理想モデル提示」には一切口を閉ざしたままなのです。

 菅首相の発言は、この辺りの事情を全て分かった上での発言なのでしょうか。その経歴から判断して金融素人である菅首相が、あえて地銀再編を自身の目玉政策的に取り上げているのは、師と仰ぐ梶山静六氏の旗頭であった“銀行悪玉論”に基づいたハードランディングな銀行改革推進の考え方を踏襲したものなのではないか、と思えるのです。

 金融機関の再編問題は、波及する経済的影響が大きいだけに一国の首相に軽々しく口にしてほしくない問題です。そして過去に首相の師である梶山静六氏が長銀を破綻に追い込んだようなやり口は、世間を金融不安に陥れた金融素人の出過ぎた政治力行使以外の何ものでもなく、このような恣意的なやり方は決して同じ轍を踏んではいけないものであると思うのです。

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