コラム
» 2020年09月30日 05時00分 公開

本当に大丈夫? 菅首相の「地銀再編」発言が、再び“失われた10年”を呼びそうな理由「第4のメガバンク」構想も難しそう(2/5 ページ)

[大関暁夫,ITmedia]

 私が各地の地銀経営者から直接話をうかがった限りにおいては、皆さん共通して「やみくもに統合したところで、統合後の明確な道筋が見えない」ということを統合に二の足を踏む最大の理由にあげていました。これを踏まえて個人的には、菅首相の発言があまりに内容が薄く、問題の本質である「統合したところで、その先どうすればいいのか分からない」という地銀の悩みを分かった上でのものとは思えません。単なる人気取り的発言ではないのかという疑問を抱かざるを得ないところです。

 一方、同一営業地域内での地銀の経営統合が容易になる下地は整い始めています。長崎県にある十八銀行と親和銀行の経営統合に「待った」をかけた公正取引員会の横やりに政治が動いて、同地域の地銀同士の経営統合に関しては独占禁止法の「寡占禁止規定」の適用除外とする「合併特例法」が今年11月に施行される予定となったからです。しかし、同一地域内の経営統合は店舗統廃合などにより目先のコストダウンは見込めるものの、経営統合後の成長戦略をどう描くべきなのか、ここ数年の地銀同士の経営統合を見る限りにおいても、その回答を見いだせるような実例はいまだ見当たらないのが実情です。

「第4のメガバンク」を打ち出したSBIだったが……

 そんな現状の中では、いくら首相がもっともらしい顔で「地方銀行は数が多すぎる」「統合も一つの選択肢」と言ったところで、果たして地銀経営者たちが一歩を踏み出せるのかと言えば、それはかなり難しいと言わざるを得ないでしょう。地銀の統合が進まないからこそ昨秋、北尾吉孝氏率いるSBIホールディングスが「第4のメガバンク構想」の名の下に、限界地銀へ資本注入しSBIが共同システムの提供や新たなビジネスを授けつつ収益改善を図るという壮大なプランをぶち上げたわけです。

SBIホールディングスが6月に発表したプレスリリース

 現時点におけるSBIの出資先は、島根銀行、福島銀行、筑邦銀行、清水銀行の4行。しかしこの構想も、先行した島根、福島両行には20%前後の出資をしたものの、その後の筑邦、清水両行には3%の出資にとどまっています。なおかつ北尾氏は自社の収益面を理由に「上限10行で打ち切り」を明言しており、ここに来て派手にぶち上げた構想は急激な尻すぼみ感が強く、「第4のメガバンク=地銀の救世主」にはおよそなり得ないように感じます。

 だからこそ今、菅首相は地銀再編を口にしたわけなのでしょうが、どうも私には菅首相の師匠の時代に起きた嫌な思い出が頭に浮かんで不吉な予感しかしないのです。

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