こうしたアパレル業界の求人縮小や変動は一時的なものなのか。河崎さんは「短期では戻らないのでは」と推測する。原因としては、多くの企業で倒産や事業譲渡が既に発生し、アパレル企業の数自体が減少しつつある、ということ。さらに「コロナ禍がアパレル企業の経営を見直すきっかけになってきている。立ち直る企業は早ければ来年度にも出てくるだろうが、採用の在り方自体が今までとは変化するだろう」(河崎さん)。
河崎さんが特に伸びるとみている求人ジャンルがEC関連の人材だ。クリーデンスのデータでも、「EC・通販関連」の求人数は3.1%増となった。コロナ禍前からアパレル大手は百貨店など実店舗依存の販売手法を見直し、ECマーケティングの強化に乗り出し始めていたが、コロナ禍がそれをさらに加速させつつあるというわけだ。
ただECというと、従来の接客スキルではなく、自社サイトの運営などに携わるIT系の技術職などが求められるようにも思える。河崎さんは「Webマーケティングの力がある人やWebディレクター、またエンジニアなどDX(デジタルトランスフォーメーション)の知見がある人」を挙げる。ただ一方で「アナログ的な接客力の高い人が求められなくなる、という訳ではない」とも分析する。
河崎さんが注目するのが、SNSなどを活用しアパレルの店員自らがインフルエンサーのように商品をPR、拡販できるマーケティング系の人材だ。中国では既にTikTokなどの動画によるライブコマース、さらにはSNSやブログによるソーシャルコマースといった手法をアパレルの店舗従業員や社長が活用し、EC上で購入を促す動きが加速している。
日本のアパレルでは実店舗への依存度がまだ高く、ECの売り上げ比率はおしなべて発展途上だ。ただ河崎さんは「とにかく人を採って店舗拡大し売り上げを出すという手法でない経営の在り方も今後は台頭する」と分析する。
アパレルの販売職、あるいは志望者に対しても「リアル店舗の販売だけで(企業が)立ち行かなくなっても、販売スキルに加えて、SNS上のマーケティングスキルを同時並行でつけておくべき。これまでの(アパレル業務の)やり方でない武器をどう持つのか、見つめなおすきっかけになるのでは」(河崎さん)とアドバイスする。
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