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» 2020年10月16日 07時00分 公開

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:JR東日本がトヨタと組む「燃料電池電車」 “水素で動く車両”を目指す歴史と戦略 (2/5)

[杉山淳一,ITmedia]

試験区間が川崎臨海工業地域になった理由

 試験区間が鶴見線、南武線浜川崎支線という工業地帯になった。これも理にかなっている。一つは立地で、川崎市が鍵を握る。川崎市は「水素社会の実現に向けた川崎水素戦略」 を打ち立てており、JR東日本とは水素エネルギー供給システムの武蔵溝ノ口駅への導入で連携。トヨタとは燃料電池フォークリフトで連携している。また「燃料電池鉄道車両実用化モデル」として、今回の実証実験に積極的に関わっている。

運行試験区間は川崎と横浜にまたがる臨海工業地域だ。南武線の武蔵中原駅付近と鶴見線の弁天橋駅付近に車両基地がある(出典:JR東日本報道資料

 川崎市が水素エネルギーに注目している理由は、水素が工業地帯の副産物として大量に生成され、活用されていなかったからだという。また、川崎市の取り組みに呼応する形で、東芝エネルギーシステムズは横浜事業所磯子地区の水素生産ラインを浜川崎工場浮島地区に移しており、まもなく竣工予定だ。東芝はくしくも10月8日に「大型モビリティに向けた高出力燃料電池モジュールを開発」と発表し、船舶・鉄道車両向け燃料電池開発を加速する。

 JR東日本にとっても鶴見線、南武線浜川崎支線は都合がいい。旅客輸送面では完全に工場の通勤に特化しており、都会のローカル線と揶揄(やゆ)されるほど、日中の運行本数が極端に少ない。工業地帯を発着する貨物輸送も重要な役割を持っているけれども、旅客電車に比べれば運行本数は少ない。

 さらに長期的な視点で見れば、川崎で生産された液体水素を鉄道貨物として全国に流通させる拠点にもなる。JR東日本地域だけではなく全国へ、液体水素を安全に、計画的に輸送できる。その意味で注目したいプロジェクトが川崎重工の取り組みだ。神戸を拠点とし、オーストラリアで生産した安価な液体水素を輸入するサプライチェーンを準備している。川崎重工は鉄道車両の実績も多く、JR西日本、JR東日本が連携すると、燃料電池電車の普及はさらに加速するだろう。

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