中国デジタル人民元“最新事情”〜当面のライバルはアリペイとWeChat Pay浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/5 ページ)

» 2020年10月22日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]
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新興国に経済圏拡大狙いも

 中国は人民元の国際化を目指しており、デジタル人民元の発行もその一環と受け止められている。この点については、人民銀関係者の中でもコメントが割れているが、当面の目的は国内での金の流れを当局が把握し、脱税など不正行為に網をかけることにある。前述したように、既に中国人消費者はアリペイとWeChat Payで事足りており、国内での普及が最初の課題だろう。

 一方、20年1月のBISの報告書は、CBDCのパイロットプロジェクトを行っているのは全て新興国の中央銀行で、金融や決済のシステムが不安定な新興国の方が、CBDCの発行に対してより強いインセンティブを持っていると結論づけた。

 中国の製造業は新興国でシェアを拡大し、規模を拡大することが多い。他国に先行してCBDCのノウハウを蓄積することで、新興国にデジタル人民元の経済圏を広げる構想も、当然中国の中長期プランには含まれているだろう。

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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