西松屋が「次のワークマン」になれる理由しまむらとも似ている(6/6 ページ)

» 2020年10月26日 05時00分 公開
[小島一郎ITmedia]
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西松屋の社長が交代

 そんな西松屋だが、秘めたポテンシャルを開花させるかもしれないと期待させる出来事があった。8月に前社長の大村禎史氏(現会長)の息子である大村浩一氏が社長に就任したことだ。

 子ども服は、買った年に着て終わりという「使い捨て」の傾向がある。そんな鮮度の高い商品を売り切るノウハウを持っている。筆者が店頭に行ったときは、「199円」のコーナーができていた。原材料である生地が少ない子ども服とはいえ、“売り切り”狙いの199円コーナーを展開できるチェーンストアは、他のアパレル小売にとっては脅威となる存在だろう。

西松屋の199円コーナー

 西松屋は子ども服がメインではあるが、自社ブランドで小柄な女性ならば着られる若いセンスのカジュアル衣料も手掛けている。また、低価格ピアスのような小物や雑貨も販売している。実用を基軸としながらも、おしゃれな商品も展開している。ターゲットに据えている“ママ”以外の消費者からも発見されるポテンシャルは以前からあった。

 10月1日の決算説明会では、大村浩一新社長が登壇。自ら業績や足元の取り組みを説明していた。

 これまでの戦略を大きく変えるような話はなかったが、筆者が注目した点があった。それは、好業績の影響でメディアからの取材が増えており、新社長が自ら積極的に世間にアピールしたい旨を語ったことだ。規模の割に広報力に乏しく、あまり積極的でない印象があった西松屋だが、変化の兆しと期待したい。すでに高い商品力を、ママ以外の層にも知ってもらいたいものだ。

 「ガランとしている」といわれる広い店舗の空間には、ママ以外の消費者を受け入れる“余白”がある。ワークマンのように、利用客がガラッと変わる瞬間が西松屋に訪れることはあるか。新社長が次の決算説明会で、どんな変化を語るのか引き続き注目していきたい。

著者プロフィール

小島一郎

株式会社分析広報研究所 チーフアナリスト・代表取締役

 年間1000社の上場企業への継続的なリサーチ活動を行っているアナリスト。独自リサーチを基盤に、企業に対して広報や企業価値向上施策に関するコンサルティングを行っている。

 1997年上智大学経済学部卒。入社した山一證券で山一証券経済研究所企業調査部に配属されるも破綻を経験。日本マイクロソフトを経て、大和総研企業調査部にて証券アナリストを行う。日経金融新聞(現日経ベリタス)、エコノミスト誌の人気アナリストランキングに名を連ねた。その後、事業会社に転身、上場物流不動産会社、上場ゲーム会社、上場ネットサービス会社で広報IRや経営企画に携わる。2012年独立。リサーチアナリストや事業会社での実務経験を活かして、企業価値向上を戦略面、広報実務面でサポートする株式分析広報研究所を設立し現在に至る。企業価値向上の実績を積み上げている。

 アナリスト、コンサルタントとしてビジネス媒体中心に記事執筆。全国紙、地上波等でのコメント紹介多数。


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