セブンの「ステルス値上げ」を疑う人が、後を絶たない理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2020年10月27日 09時28分 公開
[窪田順生ITmedia]

素晴らしい理念が生んだ「あだ花」

 もちろん、この傾向は「おにぎり」だけではない。例えば、先日もウーバーイーツでよく注文されたと話題になったローソンの「からあげくん」は定価216円(税込)だ。では、この商品が発売された86年はいくらだったかというと、「5個入りパックで200円」(日経流通新聞 1986年4月14日)である。ケンタッキーフライドチキンだって80年代から何度か値上げに踏み切っているのに、ビタッと固定なのだ。

 時代変化の中で価格をキープし続ける「実質値下げ」といってもいいような商品が、コンビニ業界にはゴロゴロしているのだ。「それだけ日本のコンビニが優秀なのだ」と誇らしげになる方も多いかもしれないが、この「無理」のしわ寄せが、コンビニバイトの過酷な労働環境や、FCオーナーの弱い立場など、「コンビニの闇」として表面化している可能性があるのだ。

 「手ごろな価格で美味しい商品」を維持するには、とにかく売れ続けなくてはいけない。そうなれば当然行きつくのは、FC側に限界まで商品を仕入れさせ、安売りは一切認めないくせに、売れ残りが出ればその原価の大半を負担させる――という昨今問題になっているFCオーナーの搾取スタイルだ。

 また、「手ごろな価格で美味しい商品」という原理主義にとらわれてしまえば、実際は量が減っていたり、材料が小さくてもとにかく見た目を盛らないといけない考え方に至る。弁当容器のかさ上げや、ハリボテたまごサンドは「手ごろな価格で美味しい商品」という素晴らしい理念が生んだ「あだ花」なのだ。

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