新型コロナウイルスの影響を最も大きく受けたのは飲食業界だ。東京商工リサーチによると、新型コロナ関連で経営破綻した企業を業種別にみると飲食業が103件と突出している。
業態の特性上、客に来店してもらいお金を落としてもらうビジネスモデルであるため、日本をはじめ世界中の飲食チェーン店の閉鎖が相次いでいる。そんな中、外食チェーン大手のワタミが主力の居酒屋から焼肉業態の「焼肉の和民」へと転換することは、経営にあえぐ飲食業界を象徴する出来事ともいえる。
そんな中、同社が運営する「ミライザカ」「三代目 鳥メロ」でグランドメニューを改定し、10月15日に全国260以上の店舗で、新メニューの提供を開始した。その戦略の変化にはどんな思惑があるのか。同社の清水邦晃社長が語った内容をお届けする。
ワタミの2021年3月期の第1四半期(2020年4月から6月)の売上高は44.3%の減少、最終損益は45億5000万円の赤字だった。通期の業績については「合理的に算定することが困難」だとして「未定」としたものの、第1四半期の赤字を吸収できるかは不透明だ。
同グループが居酒屋業態における新グランドメニュー方針の記者発表会で配布した資料によると、ワタミの国内外事業の前年比で見た既存店売上高は、20年2月には101.2%だったものの、3月に59.6%に急落。緊急事態宣言が出された4月は7.5%、5月は7.2%と壊滅的な状況だった。宣言解除後の6月は31.1%と回復基調に入ったものの、10月も59.8%までの上昇にとどまっている。
清水社長は「アフターコロナにおいても居酒屋マーケットは7割に縮小する」と予測していて、20年度末の通期決算の数字は非常に厳しいものになりそうなのが容易に想像できる。このような状況が危機感を呼び、生き残るために業態転換することを後押ししたことは間違いないだろう。
それに伴い、業態ポートフォリオも大きく変化させた。従来は「居酒屋 和民」「ミライザカ」「三代目 鳥メロ」を軸に、専門性を高めた「白熊商店」「炉ばたや 銀政」などのブランドを運営していた。それを焼肉食べ放題の新業態「上村(かみむら)牧場」「焼肉の和民」「から揚げの天才」を主軸に据え、ミライザカと鳥メロは一部を焼肉店に転換し、残りはそのまま経営を続ける。
清水社長は「10月13日現在ワタミグループの店舗数は424店で、そのうちミライザカは143店、鳥メロが130店となっている。ミライザカと鳥メロを除き他の業態は縮小する予定だ」と話す。具体的には「居酒屋 和民」全店をはじめ、居酒屋業態店舗のうち120店を「焼肉の和民」に転換。2020年度に60店舗、21年度中に60店舗というスケジュールで焼肉店に変えていく。すでに焼肉の和民の1号店は10月5日に大鳥居駅前(東京都大田区)にオープンさせた。
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