――リーガルテックサービスの導入を検討されている企業の方に向けたアドバイスをお願いします。
佐々木さん: リーガルテックを導入するには3つの壁があります。
(1)予算の捻出
(2)導入効果の示し方
(3)導入時のセキュリティ
予算は経営者を説得することが、すごく大事です。まずは試しに限られた部署や契約類型で小さく始めて実績を出し、導入効果を伝えながら徐々に予算を積んだほうが進めやすいはずです。サービス導入前は定性的にしか効果を示せないですが、導入さえできれば効果を定量的に見せられます。
逆に言えば、導入したらパフォーマンスをチェックする習慣をつけないといけません。法務は定量的にパフォーマンスが測りにくい業務ですが、数字で話せるようにすれば予算が取りやすくなります。
セキュリティ面については、頑張って情報システム部門を説得するしかないですね。大きな企業だとクラウドよりオンプレの方が良いと言われますが、法務部長自ら情報システム部門のところに行って「クラウドのほうが安全でしょ?」と説得していきましょう(笑)。
――導入されているサービスのなかで、一番効果があったものは何ですか?
佐々木さん: 自前で作ったものですが、契約審査のシステムでしょうか。これがないとスタッフのパフォーマンスを評価できません。当社では年間で1000件以上の契約審査をしているので、Excelで管理するのは無理です。
――開発まではどれくらいの検討期間で、どのような形でプロジェクトが進みましたか?
佐々木さん: 発案からは1年ほどで、すごく簡単なワークフローシステムです。
――現場から、このようなシステムで依頼するのは面倒くさいなどといった反発もありそうです。
佐々木さん: 最初はありましたが、メールを出すよりもこっちのほうが楽です。担当は契約の種類、案件、担当、期限と対象の製品を入れてドラフトを添付してくるだけ。入力は本当に簡単ですけど、アウトプットは拠点・担当者ごとの件数、依頼日、回答日などの内訳がデータとして出てくるわけです。
――システムの開発も佐々木さんが進められたのでしょうか?
佐々木さん: もともとプロジェクトは動いていましたが、私はこのシステムの使い方を考えていました。ただ使って「便利だね」で終わらせないためには、データ管理・分析の方法までセットにするべきです。
――佐々木さんがデータ分析について発想されたきっかけを教えてください。
佐々木さん: 工場の現場から着想を得ました。工場では計画をつくると、必ず実績をボードに書いてパフォーマンスデータをリアルタイムで集計して工場内に表示しています。これを管理部門ではやっていないんですよ。
現場は製造コストを下げるためにパフォーマンスを数値化して見せています。計画より実績が下回ると、製造コストが上がって工場の利益が減ってしまう。利益に直結しているから目標に向かって、努力をするわけです。一方で、管理部門はコスト部門として扱われてきたから、利益を生む発想がないんですよね。
――管理部門であっても、実績データを元に計画を立てられれば「ここのリードタイムをもっと短くしよう」「これって利益になっているよね」と考えられるのですね。
佐々木さん: そうそう、コストダウンにもなるし。納期を早くしてパフォーマンスが伸びている、というアピールもできます。工場現場の製造工程はIoT化が進んでいて、細かく管理をしています。リアルに見ると刺激を受けますね。
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