本記事は、BUSINESS LAWYERS「【連載】企業法務の地平線 第29回 ウィズコロナ時代に問われる法務部門の組織運営 鍵はリーガルテックの積極活用 – 太陽誘電」(2020年9月4日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい、ビジネスの在り方が大きく変化するなか、法務部門の働き方も変化を余儀なくされています。
在宅勤務をサポートするサービスとしても注目を集めるリーガルテック。予期せぬ事態をきっかけに、導入の検討スピードを早めた方も多いのではないでしょうか。一方で全社の理解を得るまでに時間がかかり、苦慮する担当者の声を聞くことも少なくありません。
否応なく変化が求められる時代のなか、法務部門はデジタル技術の活用を通じて、どのように変わっていくことができるのでしょうか。法務部門の変革に積極的に取り組む、太陽誘電の佐々木毅尚さん(法務部長)にデジタルサービスを取り入れた組織運営の秘訣を伺いました。
――まずは法務部門の体制について教えてください。
佐々木さん: 当社では2003年に法務部ができ、私は2017年から法務部長を努めています。当社の売上の90%は海外なので、海外案件が非常に多いことが特徴です。
私の代になってから、海外の法務担当者と日本の本社が一体となって連携しながら案件をコントロールする体制に変えました。台湾・シンガポール・中国・韓国に法務担当者を置いています。これは言語とスピードの問題が大きいですね。
国内の法務部員は20人で、このような体制を取っています(下記表参照)。
主な業務 | 人員 | |
---|---|---|
ビジネス法務 | 契約や法律相談、訴訟など、いわゆる一般の法務 | 12人(うち弁護士資格保有者6名) |
コンプライアンス課 | 一般的なコンプライアンスの推進・輸出管理 | 5人(うち弁護士資格保有者1名) |
リスク管理課 | 太陽誘電グループのリスクマネジメント | 3人 |
――どのような採用方針をとっているのでしょうか?
佐々木さん: 弁護士資格を持った方の採用を基本に考えています。ベースとして、しっかり法律を学んだ方。プラスアルファでコミュニケーション能力・プレゼン能力・ファシリテーション能力・ビジネスセンス・グローバル感覚・バランス感覚を持った方を採用するスタンスです。
――弁護士資格を持っていることが前提なのですね。
佐々木さん: 大前提です。新卒を採用して5、6年かけて育てて、一人前の担当者にするのが従来のモデルでしたが、今は新卒を育てる時代から、しっかり基礎を学んだ優秀な人材を採る時代に変わっていると思っています。
――大手の法律事務所や企業法務の事務所にいた弁護士の方を採用されているのですか?
佐々木さん: そこはこだわっていません。大手出身者に限らず優秀な人をじっくりと探しています。私が部長になってから一番力を入れたのは採用ですね。とにかく面接で会って、当社に合いそうな人を探していますが、当社の知名度が低いためものすごく苦労しています(笑)。
――そのような方針を掲げているのは、ビジネスのスピード感に対して育成が間に合わないからでしょうか。
佐々木さん: 間に合わないし、法律から教えることは無駄だと思っています。法律をしっかり勉強した人がマーケットのなかにいっぱいいるじゃないですか。若い人から部長クラスまで、人材マーケットが充実しているので、そこから採用した方がいいですよ。
――営業から法務への異動などの人事はないですか?
佐々木さん: ないですね。法律の内容もどんどん難しくなっているので、法的なバックグラウンドがなければ契約審査や法律相談には対応できないと思います。
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