ディズニー決算から考える、厚労省発表「コロナ解雇7万人」が“それどころではない”ワケ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

» 2020年11月13日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
前のページへ 1|2       

非正規雇用者へのあおり色濃く

 コロナにおける労働市場の影響を把握するうえでは、「コロナ解雇・雇い止めか、そうでないか」という定性的な判断も一部入る厚労省の統計ではなく、総務省が毎月公表している労働力調査から確認することが適切といえるだろう。

 これによれば、コロナ解雇・雇い止めペースが鈍化したとする厚労省の統計と異なり、完全失業者は2月から8カ月連続で増加していることが分かる。その増加幅は実に42万人にのぼり、増加に最も寄与した要因が勤め先や事業都合による退職の前年比+19万人。新たな求職のための離職が+9万人(収入のために求職する場合を含む)、そして自発的な離職が前年比+6万人であった。

 正社員と非正規社員を比較すると、コロナ禍の影響の大部分は非正規社員の雇用調整によるものが大きく、正社員に関しては、全体としてみれば前年比で増加していることが分かる。

非正規雇用の減少 色濃く オコスモ作成 非正規雇用の減少 色濃く

 とりわけ、これは女性への影響が大きい。非正規雇用の割合が55%と男性の2.45倍と高いことから、性別でみると女性がコロナ禍によって退職を余儀なくされているケースが多いとみられる。

 確かに、失業者の増加数の全てがコロナ禍の影響によるものとはいえない。しかし、前年同月比水準で増加幅が拡大したのは、いずれも20年2月が境となっている。そうすると、失業者の急増要因には、コロナ禍関連の影響が大部分を占めていることに疑う余地はないだろう。また、失業に至らなかったケースでも、減給や関係企業への出向・配置の転換といった労働力統計にもあらわれてこない。雇用は維持されたとしても、家計への影響が拡大している懸念もある。

 9日には米ファイザー社が新型コロナウイルスのワクチン臨床実験で高い予防効果を示し、コロナ禍終息への期待感が高まった。日経平均株価は11日にバブル崩壊後最高値の2万5338円52銭で引けている。しかし、コロナ禍の終息するタイミングは未だ不明確で、足下の労働市場、ひいては実体経済が軟調であることに変わりはない。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

Twitterはこちら


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.