新ワザ「無限くら寿司」の本質が「マスク転売と同じ」と断言できるワケ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2020年10月30日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 「トリキの錬金術」が規制されてまもなく、新たなGo To Eatの裏技「“無限”くら寿司」が発見された。これは、くら寿司の公式アプリからGo To Eat予約をすることで、1日2回まで、ポイントがもらえる仕組みを利用する。

 公式ホームページによれば、「家族3人の場合、3000ポイントで3000円の会計を行うと、3000円分のポイントが再びもらえる。そのポイントで3000円の会計を行う……」とあり、これを繰り返すことで、文字通り“無限”に実質無料で食事を楽しめるというわけだ。

くら寿司公式ホームページでは、ディナーを活用した“無限”スキームが分かりやすく解説されている

 しかし、実質無料となる理由は、政府が財源を支出しているからに他ならない。政府が懐を痛めるということは、私たちの納めた税金がこのような“裏技”に注ぎ込まれるということを意味する。

 免許合宿や商品券付き旅行プランをはじめとしたGo To関連の各種“裏技”は、話題となった当初は、マスク転売と同じく「ルール違反ではなかったものの、モラルが問われた」事例である。今回のGo To Eatをめぐる問題もマスク転売と同様にモラルが問われるべきではないだろうか。

“錬金術”と“無限”の違い

 “無限”の事例では、“錬金術”に苦言を呈していた鳥貴族と異なり、くら寿司側が公式サイトで大きく画像を掲示しており、利用を促す姿勢が目立つ。それではなぜ鳥貴族は、苦言を呈したのだろうか。

 “トリキの錬金術”が発掘された当時は、食事代が1000円未満でもポイント付与対象となっていた。1品のみ注文して会計をすることで、食事代が無料になるばかりか、追加で673円分のポイントがもらえることから、“錬金術”として話題となった。ところが鳥貴族側が予約サイトに支払う送客手数料は数百円といわれており、一品のみの注文では利益は赤字になる可能性すらある。予約サイトと顧客が利益を享受し、本来救済対象であったはずの鳥貴族側にほとんど給付が行き渡らないため、鳥貴族側は“錬金術”に苦言を呈したのだ。

 のちにポイント未満の食事代は対象外となり、このスキームはお蔵入りとなった。しかし、これではポイント給付額と同額の利用は未だ対象となる。

 つまりタダで何度でも食事ができる“無限”スキームは規制対象外だ。そして、“無限”の場合は、予約サイトに幾ばくかの送客手数料を支払っても利益が出る構図になる。そのため、公式サイトのTOPページで積極的に利用を促す事業者が現れることも自然なのだ。

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