戸惑っているのは飲食店だけではない。都道府県の事務局も同様だ。食事券事業は868億円を注ぎ込む大型事業にもかかわらず、農林水産省は食事券の販売方法や、換金などのスキームを示さなかった。つまり、各都道府県の事務局に丸投げしているのである。
そのため、各都道府県の事務局はそれぞれでスキームを作ることになった。販売方法も地域でまったく異なる。コンビニエンスストアではセブンイレブンが窓口になる県や、ファミリーマートが窓口になる県が比較的多い。郵便局で販売する県もあれば、郵便局から断られた県もあるという。地方銀行や信用金庫が窓口になるところもあれば、スーパーで販売する地域もあるなどさまざまだ。
ある地域の事務局は、金融機関を通じて換金をしようとしたが、手数料が高すぎて事務費では賄えないことから断念し、最終的に比較的安い手数料で飲食店に送金することが可能なJTBの送金システムを利用したという。事務局の担当者はこう憤る。
「全国規模で事業を行う場合は、それなりのノウハウを持っているところが担当しないと、スキーム自体が成り立ちません。各都道府県にスキームから作れというのはおかしいのではないでしょうか。おそらく、農林水産省もノウハウを持っていないのでしょう。制度設計もなく、時間もないのに、押し付けられた感じがします」
また、地方では、どれだけの効果があるのかも疑問視されている。東京都ではプレミアム分100億円を含む、500億円の食事券が販売される。一方、最も少ないのは宮崎県で、プレミアム分を含んで21億円。都市と地方では予算が大きく違う。
オンライン飲食予約事業では616億円の予算が投入されているものの、地方ではオンライン予約をする商習慣がなく、首都圏など大都市での利用が中心と見られている。前出の事務局の担当者は「Go To Eat」自体の効果を疑問視している。
「新型コロナウイルスの感染が7月以降に再拡大したこともあって、地方の飲食店も本当に困っています。食事券事業はオンライン飲食事業よりは期待はできますが、それでも地域で根を張って営業してきたお店に、多くのお金が落ちる仕組みにはなっていないのではないでしょうか」
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