食事券事業は11月中に販売を始める地域も多く、これから本格化する。前述の通り事業規模が500億円と最もマーケットが多い東京都で11月20日から販売と利用が始まると、さらなる混乱が起きる可能性もある。
東京都で購入できるのは、はがきかスマートフォンで申し込んで事前に引換券を取得するアナログ食事券と、ヤフーが運営する電子チケットプラットフォームのPassMarketを通じて販売されるデジタル食事券の2通りがある。アナログとデジタルともに、スマートフォンやPCを使って取得する方法をとっていることから、機器に不慣れな人には買いづらいものになっている。また、東京都以外でも購入できるため、アクセスが集中することも予想される。
懸念される点は他にもある。一部のグループによる買い占めが起きて、金券ショップやオークションサイトなどに転売される可能性も否定できない。あってはならないことだか、食事券の偽造も起きるかもしれない。飲食の大手チェーンからは、実際に偽装を心配する声が出ている。日本フードサービス協会も「東京でどんなことが起きるのか、注視しておく必要がある」と警戒する。
食事券事業も、オンライン飲食予約事業と同様に、全ての飲食店を支援するものになっていないうえ、食事券の購入に殺到するため、利用できる人も一部の人に限られそうだ。一方で、新型コロナの感染が11月から再び拡大し、北海道では営業時間の短縮が要請されるなど、政策と実情が矛盾する事態も起きている。
いずれにしても、「Go To Eat」が本当に飲食店のためになるのかどうか、事業の途中や終了後に地域ごとの参加店舗数や利用額などを明らかにして、その効果を検証するべきではないだろうか。
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/。著書に『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)
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