訪日旅行者はいつ戻る? 東京五輪は?  「GoTo後の観光業」、復興への課題に迫る都内のホテルは高値に(3/5 ページ)

» 2020年11月19日 18時47分 公開
[村田和子ITmedia]

海外からの受け入れのリスクと課題は?

 グローバルな往来には、国別の感染状況や受け入れ方針が鍵となるとともに、不安の払拭も大きな課題になるだろう。海外との往来についてのリスク情報は少なく、日本国内での移動とは比にならない漠然とした不安が大きい。

 そこで、移動に際してのリスクとクリアすべき課題、日本と世界のコロナ感染対策の状況や違いなどについて、国際保健・医療政策のスペシャリストである、慶應義塾大学 医療政策・管理学教室 特任助教の坂元晴香氏(内科医)に取材した。坂元氏は、厚生労働省国際課に勤務し、日本政府の代表として、WHO(世界保健機関)やJICA(国際協力機構)などとともにグローバルな視点から、感染症対策の行動計画・立案などを行った経歴を持つ。

phot 坂元晴香(さかもと はるか)慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室特任助教。2008年、札幌医科大学医学部卒業。聖路加国際病院で初期研修後、同院で内科専門研修を修了。11年より、医系技官として厚生労働省大臣官房国際課および母子保健課に勤務。ハーバード大学大学院で公衆衛生学修士を取得。20年4月より現職

――日本のこれまでのコロナ対策をどうみている?

 高齢化が進み人口密度が高いという、コロナ対策としては不利で難しい状況にもかかわらず、死者数が少なく抑えられている。全体的にみて今のところ成功していると思う。

――日本のコロナ対策の何が成果につながっているか?

 国民の意識の高さが大きい。マスクや手洗い、三密回避など、ハイリスクな行動を理解し、守る人が、海外と比較しても多い。また2月という早期に、「三密」という避けるべきハイリスクな環境や行動に注目、誰もが分かる「三密」という言葉で伝え、回避を促した専門者会議の功績は大きいと思う。実は最近になって、ようやく他国では「三密回避」がいわれるようなった。

 加えて、在宅勤務の推奨や、業界別に感染対策のガイドラインを設定して徹底するなど、企業の努力も寄与している。企業内でのクラスターの発生は、執務中ではなく休憩室での昼食や飲み会などで発生するケースがほとんど。在宅勤務をすることで、そういった休憩時のリスクも減らすことができる。

――GOTOトラベルも始まりましたが、旅行でのコロナ感染リスクはどうみる?

 旅行中かどうかに関わらず、三密を回避することが大事だ。屋外の離れたところですれ違う程度は問題ないし、バスや飛行機も換気がきちんとされており、マスクをしていれば、よほど大声で話さない限り感染リスクは高くはならない。(ガイドブックやSNSで人気のある定番の旅から、時間や場所、移動手段、方法などをずらす)ずらし旅なども言われているが、人を分散させることで、リスクはさらに下がる。

 温泉も、入ることそのものからの感染(お湯からの感染)は少ないと考えているが、脱衣所などではマスクを外すこともあり、大声での会話を控えるなど、注意が必要だ。

 旅行でリスクが高まるとすれば、気のゆるみから三密回避を忘れてしまいがちであること。これは各人が気を付けて徹底するしかない。

phot 企業内でのクラスターの発生は、執務中ではなく休憩室での昼食や飲み会などで発生するケースがほとんどだという(写真提供:ゲッティイメーズ)

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