GRヤリスの試乗会は今回が3度目である。年明けのオートサロンでは見るだけだった。ということになっているが、その時点で筆者はすでに乗っていた。12月16日に、富士スピードウェイのジムカーナコースと駐車場に作られたと特設ダートコースで迷彩を施されたプロトタイプをテストしたのだ(ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来参照)。
WRCなどモータースポーツシーンで行われるファインチューンを量産に持ち込み、生産手法や開発手法も大幅に変更されたGRヤリス
オートサロンで発表するまでは記事を載せませんという誓約書を書かされているので、掲載を我慢した状態で年を越えた。まあ実のところ販売店研修会のおこぼれで、大勢にしごき倒された後のクルマはだいぶコンディションが悪く、性能の片鱗(へんりん)を垣間見た程度のものだった。
その後やはり7月終わりに富士スピードウェイのショートコースで、「RZ“High performance”」「RZ」「RS」の3台を試した(GRヤリスで「モータースポーツからクルマを開発する」ためにトヨタが取った手法参照)。
そして年の瀬の足音が近づいてきた今頃になって、ようやく公道試乗会に至ったわけである。まあトヨタとしても、いろいろ情報公開の作戦はあるのだろうが、さすがにほぼ一年がかりは長すぎると思う。
まあ書き手のわれわれが多少の迷惑を被ったとしても、仕事なのでそれは構わないが、どうもこの一連のスケジュールは、ユーザーにとってのベストではないような気がする。
伊豆のホテルを会場に行われた公道試乗会
ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論
ヤリスは高評価だが、満点ではない。悪いところはいろいろとあるが、それはパッケージの中でのトレードオフ、つまり何を重視してスペースを配分するかの結果だ。ヒューマンインタフェースから、なぜAピラーが倒れているかまで、コンパクトカーのパッケージに付いて回るトレードオフを、ヤリスを例に考えてみよう。
ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(後編)
今回のGRヤリスでも、トヨタはまた面白いことを言い出した。従来の競技車両は、市販車がまず初めにあり、それをレース用に改造して作られてきた。しかし今回のヤリスの開発は、始めにラリーで勝つためにどうするかを設定し、そこから市販車の開発が進められていったというのだ。
GRヤリスで「モータースポーツからクルマを開発する」ためにトヨタが取った手法
トヨタは「モータースポーツからクルマを開発する」というコンセプトを実現するために、製造方法を変えた。ラインを流しながら組み立てることを放棄したのである。従来のワンオフ・ハンドメイドの側から見れば高効率化であり、大量生産の側から見れば、従来の制約を超えた生産精度の劇的な向上である。これによって、トヨタは量産品のひとつ上にプレタポルテ的セミオーダーの商品群を設定できることになる。
ヤリスの何がどう良いのか?
ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。
トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス
ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。
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