テレワーク下での「通勤手当」と「在宅勤務手当」、どうやって支給する?社会保険料や税金への影響も(3/3 ページ)

» 2020年11月24日 07時00分 公開
[企業実務]
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社会保険、税金等への影響範囲のまとめ

1.社会保険料への影響

 各種手当の支給により社会保険料への影響があることは前述の通りですが、発生する可能性のある対応について整理しておきましょう。

 在宅勤務手当を新たに毎月支給することにより、また通勤手当が実費精算となったことにより、結果として毎月の固定的賃金が変更となりますので、社会保険の標準報酬月額が変更(随時改定)となる可能性があります。手当の新設のほかに、支給方法の変更(月額で支給していた手当を日単位での支給へ変更するなど)などが発生した月から支給額を3カ月間チェックして随時改定の対象となった場合は、届け出が必要となります。

 社会保険の標準報酬月額が変更になることによる影響としては、保険料が増減するだけでなく、細かいことにはなりますが、結果的に健康保険の各種給付金などへの影響や将来の年金額が増減することにもなり得ます。

2. 割増賃金単価への算入

 在宅勤務手当を毎月支給する場合は、前述の通り割増賃金を算出する際の基礎に含まれることになります。

 これを回避するために、支給タイミングを賞与時などにまとめたとしても、毎月支給額が確定しているのであれば割増賃金の基礎から除外することはできませんので、支給時期を調整することでは解決になりません。

3.小口精算でも雇用保険・社会保険の対象に

 通勤手当は一定の要件のもとで所得税が非課税となる手当ですが、雇用保険・社会保険についてはその算定基礎に含める必要があります。

 多くの会社では、毎月の給与計算処理で通勤手当も算出して、他の手当と一緒に振込処理をしていると思われます。通勤手当を月単位で支給するのではなく、日単位の実費支給に変更すると、他の営業交通費等と同じ取扱いとして、現場で小口精算したいところですが、取扱いが異なることを忘れないようにしなければなりません。

 営業交通費は非課税で、雇用保険、社会保険も対象外となります。しかし、通勤手当は同じく非課税ですが、雇用保険と社会保険の対象となりますので、従来通り給与計算で処理することが確実です。

4. 源泉所得税についての課題

 在宅勤務手当は、他の手当と同様に給与所得の一部ですので、当然に課税対象となる手当です。

 通勤手当も、実費相当額を支給する限りは、通常通り定められた範囲で非課税の処理をすることになります。

 ただ、原則が在宅勤務となり通勤が不要となるにもかかわらず、依然として定期代相当額を支給するようなケースでは、非課税通勤手当として認められないことが想定されます。

 実際に通勤費不要を前提とするにもかかわらず通勤手当を支給し続けることは考えにくいですが、あくまでも実費相当額だからこそ非課税処理が可能となることを理解しておきましょう。

著者紹介:濱田京子(はまだ・きょうこ、正しくは濱の異体字)

エキップ社会保険労務士法人 特定社会保険労務士。大企業から中小企業、ベンチャー企業とさまざまな企業規模で働いていた経験を生かして、企業の成長ステージに対応し実態に即した提案・コンサルティングを得意とする。

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