テレワーク下での「通勤手当」と「在宅勤務手当」、どうやって支給する?社会保険料や税金への影響も(2/3 ページ)

» 2020年11月24日 07時00分 公開
[企業実務]

3.在宅勤務手当の金額はどの程度が適当か

 実際に毎月の給与に加算して手当を支給することを検討する際に、その金額の妥当性を検討する必要が出てきます。

 最近、急激にテレワークへシフトしたことでさまざまな企業がホームページ等で自社の対応について公表しています。それらの情報をまとめたものが図表2です。

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 これらの公表情報では、月額給与に加算する手当として3000円から2万円を支給していることが分かりますが、比較的高いという印象を受けます。

 現実的な実費相当額を考えると、3000円〜4000円程度が妥当ではないかと筆者は考えています。2019年の総務省「家計調査」の単身世帯の光熱水道費は月額1万1652円でした。1日当たりに換算し(30で除す)、その半額として、日額200円弱となります。月の所定労働日数が20日と考えても、月額4000円となることがその理由です。

 会社が何に使うための手当として支給するかという目的によって金額は決まりますが、単に光熱水道費程度をカバーするということであれば、数千円でも可能だと考えられます。ただ、その他の目的も含めるのであれば、その分を加算して検討するとよいでしょう。

通勤手当の取扱い方法

 在宅勤務がメインとなり通勤することがなくなる、または少なくなるため、いままで支給していた通勤手当の取扱いをどのようにするかという問題があります。

 従前は通勤が前提だったため、定期代相当額を月額で固定額の通勤手当として支給していたと思いますが(場合によっては6カ月定期代相当額などの場合もあります)、それを実際の出勤した日の分だけを実費精算することに変更するかどうか、ということが検討のポイントとなってきます。

 この変更を検討するにあたり、そもそも自社の就業規則で通勤手当の支給要件がどのように規定されているかを確認しておく必要があります。

 まず、通勤手当として一律○円支給と支給額が固定化されていたり、1カ月分の定期代相当額を支給するとだけ規定している場合は、一方的に不支給としたり減額したりすることはできない可能性があります。

 通勤手当として支給する金額はあくまでも実費分であることが明記されていれば、実際に通勤自体が不要となり実費が発生しないのであれば、発生した実費分だけを支給することに合理性がありますので、実費分だけの支給とすること自体が問題となることはないと考えられます。

 通勤手当を実費にすることと在宅勤務手当を別途支給することには実務的な関連はありませんが、原資の確保という意味で同時に検討を行っているケースは多いでしょう。通勤手当を1カ月単位などの定期代相当額から日単位の実費で支払うことに変更する際に考慮しておくべきポイントは、社会保険の随時改定(月変)対象となり得るという点です。

 実費支給に変更した月が固定的賃金の変動があった月となり、その変動月から3カ月間に支給された報酬の平均月額が従前の標準報酬月額と2等級以上の差が生じた場合は、随時改定の手続きが必要となります。

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