鉄道会社の終電繰り上げは「必然」、これだけの理由コロナ以前からの課題(4/4 ページ)

» 2020年11月27日 08時00分 公開
[小林拓矢ITmedia]
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終電の繰り上げは、社会情勢が積み重なった結果

 JR西日本は、繰り返しになるが、コロナ禍以前から終電の繰り上げを検討していた。さらに世間で「働き方改革」が叫ばれ、長時間労働は悪いものとされる風潮が高まる中では、「ブラック企業」問題も看過できない。パワハラなどもあるが、主な問題は長時間の過酷な労働だ。一方、きちんと残業代を支払っている会社でも、人件費削減による残業代や、超過勤務の手当支払いをどう削減するかも課題になっていた。

 鉄道の保線作業員の不足も、コロナ禍以前から続く課題だ。人員不足を前提とした社会に適応すべく、機械化が行われている。またホームドアなどの工事が増えているのも、鉄道の安全性を高める目的だ。そのための工事時間も必要だ。こんな状況下で、朝早くから夜遅くまで運行を続けていたらどうなるか。働く人の過酷さは増すばかりだ。

 さらに現在の日本では生産年齢人口が減少し、一般の企業で働く人たちの数も減少している。社会全体の高齢化により、夜遅くまで働いたり、外でお酒を飲むことも減る傾向にある。大手居酒屋チェーンが業態転換を繰り返すのも、この中で生き残るためだ。

 そこへコロナ禍が到来した。飲食店への直接的な打撃に加え、終電繰り上げで飲食店はさらに厳しくなったが、すでに述べた通り、終電の繰り上げ自体は予想されていたものだった。

 鉄道各社は減収傾向が続いている。JR東日本に至っては、元に戻ることはないと予想する。しかしコロナ禍以前から、鉄道事業者は深夜の工事時間確保が必要であり、利用者は深夜に鉄道を必要としなくなっている状況があった。

 「安全」「コスト」「利益」を考慮すると、鉄道事業者としては終電をどのタイミングで繰り上げるかが悩みどころだったはずだ。少ないながらも、確かに終電は利用されていたからだ。だがコロナ禍で、その利用者も大幅に減少したことが、今回の各社による終電繰り上げ表明につながったと考えられる。

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