コロナ禍で服の“クリーニング離れ”が深刻化 成熟市場でも消費者の心をつかむために必要な3つの視点とは復活のシナリオは(3/5 ページ)

» 2020年11月30日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

白洋舎は新規需要の掘り起こしを考える

 白洋舎は2020年12月期第3四半期の連結業績を発表しています。売上高は290億円(前年同期比22%減)、経常損失36億円の赤字です。このうちクリーニング事業の売上高は139億円(同19%減)、営業損失10億円です。同社ではクリーニングだけでなく、事業者向けリネンサプライやレンタル事業の売り上げも大きいのですが、こちらも営業損失15億円と厳しい数字になっています。

 これまでは、クリーニングで250億程度の売り上げがありました。それが20年度は200億を切る可能性もあります。そこで同社では新しい需要の掘り起こし策を打ち出し始めました。

 それが「洗濯代行サービス」です。「PRIME AQUA」と名付けられたこのサービスは、東京都内の一部の区で10月から提供を開始しています。同社の担当者が利用者の自宅を訪問して洗濯物を回収し、洗濯して再び届けるというサービスです。価格は3キロで2500円。6キロで3000円です。同社では450人の回収担当者を配置していますが、果たしてこのようなサービスは利用者に響くでしょうか。たまった洗濯物を一気に洗うだけであれば、近所のコインランドリーを使うでしょう。持って行ったり持ち帰ったりする時間のない人にとっては便利なサービスだと思いますが、少しでも支出を減少させたい家庭にとっては、利用料金がネックになるかもしれません。

 同社の高品質なサービス力を売りにするのであれば、着る機会が減ったスーツやコートをきれいな状態のまま保管してくれるプレミアムなクリーニングサービスや、スーツと共に利用機会が減った革靴やカバンのような革製品のクリーニングなど、「どこへ頼んだらいいか分からないもののクリーニングサービス」こそ適しています。他社ではできない特別なサービスを強化してほしいと個人的には思います。もちろん、同社には「カスタムクリーニング」というプレミアムなサービスや、くつ・バッグ・ぬいぐるみのクリーニング、宅配サービスなどもあります。しかし、これらのサービスが消費者に十分に認知されているようには思えません。今こそ打ち出すチャンスだと思うのですが。

 同社はリネンサプライや環境美化用品のレンタル・販売サービスの大手であるトーカイ(岐阜市)との業務提携を発表しています。これは、今後の法人需要獲得に向けた布石といえるかもしれません。

 しかし クリーニングのような旧態依然とした市場の中で本当に必要なのは、もっと消費者の抱えている本質的な課題を解決するようなサービス開発です。なぜ利用が減少しているのか。なぜマーケットが縮小してきているのか。そこには解決すべき課題を解決できずにいる業界慣習があるからではないか。ここにどうメスをいれていくかが、成熟した業界で勝ち抜いていくためのポイントになります。実はそのような企業が今、クリーニング市場を席巻し始めています。

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