感染者最多の米国に「海外出張」 空港で実感した水際対策の違いとビジネス渡航の現状世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2020年12月03日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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情報収集と細心の注意の上、ビジネス渡航は可能

 日本政府の取り組みでは、海外で取材活動を行って帰国した者に、水際対策として職員を配置してPCR検査を実施する。空港はいろいろな国から入国しようとする帰国者だらけであり、そんな中で帰国者の案内やPCR検査の実施・手配まで担当する人たちが大勢いた。感染リスクが高い環境で、関係者は嫌な顔一つせずテキパキと作業を行っており、頭が下がる思いだった。

 言うまでもなく、そこには税金も使われているはずで、まさに感謝しかない。その後、帰国後の生活では、決してそれ以上の迷惑を掛けるわけにはいかないので、14日間の自己隔離をきちんと徹底して行った。

 もちろん、米国滞在中もこうした検査が帰国時に行われることは予測していた。そのため、人が集まるデモなどを取材する際は、感染しないよう自己管理に細心の注意を払っていた。現地で会ったジャーナリストたちも同様に、マスクを二重にするなど、感染を避ける、また人に感染させることがないよう、できる限りの自己対策をしていた。日本から訪問していた筆者は、仕事とはいえ訪問先から新型コロナを持ち帰るようなことがあってはならないと意識していた。

 ちなみに知り合いの話では、カナダから日本に帰国した人たちにはPCR検査が行われるが、感染者が多くないために上陸拒否対象指定の解除がなされたオーストラリアやニュージーランドから日本に入国する際には、PCR検査が実施されることはないという。ただ帰国後14日間の自宅待機は必要になる。こうした情報をきちんと大使館などでチェックし、訪問先と、帰国時の様子を調べておけば、欠かすことのできないビジネスなどでは渡航も可能である。ただ細心の注意を払うことは最低限の条件だ。

 現在のところ、韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国(香港、マカオ)、ブルネイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドからの入国には11月以降、原則としてコロナの感染検査は必要ない。ビジネス関係などで必要な人たちは基本、自費で検査を受けなければならない。

 日本はきちんと水際対策を行っているといえる。ただ今後国外からの来日者が増えれば、どこまで対処できるのかは未知数だ。だが「鎖国」をいつまでも続けるわけにもいかないので、入国後の行動監視などを徹底して行う必要があるだろう。

 そんな状況を一変させることになるワクチンが、広く行き渡るようになる日はいつになるのだろうか。そう遠くないような気はするが、それまで、私たちの日常やビジネスが引き続き制限されることになる。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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