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中小企業でもジョブ型雇用は可能なのか難しいのでは(2/3 ページ)

» 2020年12月21日 12時35分 公開
[猪口真INSIGHT NOW!]
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 まず、似たような概念のことが、前にもあり、結局失敗しているということ。

 思い起こせば、約20年前にもてはやされた「成果主義」による人事考課もそうだろう。比較的平等な条件からの営業などは、まだ成果での査定はやりやすいと思うが、通常仕事の成果には、多くの人がかかわり、チームで動かすものであり、成果だけを人事考課にあてはめることが、多くの企業においてその後の人材育成や組織力の向上には結びつかなかったことを考えれば、このジョブ型にも疑問が浮かぶ。第一、成果だけで給与が決まるのであれば、少しでもいい条件の会社があれば、成果を上げた人はすぐに転職してしまうだろう。多くの人は仕事の結果と給与だけで働いているのではない。

 次に、仮にその人材には、自社内で「適所」がない場合はどうするのかという問題だ。ビジネスの能力には様々なものがあるから、大企業で、部署や子会社など、「適所」がたくさんあるところは、何かしらの「適所」を与えることができるからいいが、中小企業は、適所がそうそうはあるものではない。適所がないからクビというわけにはいかないのだ。

 最後に、これがもっとも大きな点かもしれないが、経営サイドが、「ジョブ型」のジョブを本当につくれるのだろうかという疑問だ。作れないなら、そもそも、スタートラインにすら立つことができない。

 経営トップが、「これから○○のビジネス領域へ取り組む。自分が責任を取るから○○の能力を持った人材を確保する」「○○と新たな取引ができた。これまでにないチャレンジなので、○○の能力を持った人材を確保する」とはっきり言える経営者が何人いるのだろうか。

 おそらく、現在の経営者の多くは、このコロナ禍によって、「ジョブがつくれない」ことに頭を抱えている。

 「ジョブ型でいけ!」と人事に指令しているだけではないのか。

 もはや、現在の社員分の仕事すら作れない状況に陥っている、だから、業績が少しでも悪化すると、「希望退職者」を募ったりする。順番が逆ではないか。

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