2020年も残すところあとわずか。この1年は、あらゆる面で新型コロナウイルスに振り回された1年でありました。もちろん、経済界もコロナ禍抜きでは語ることのできない年でした。そこで、21年に向けて押さえておくべき企業マネジメントの出来事を振り返りつつ、ヒントを探ってみます。
まずはコロナ禍が直接企業に及ぼした影響ですが、極論すると、既往症のある人が新型コロナに感染すると重篤化しやすいのと同じく、企業経営として既往症を持っている企業、そうでない企業で明暗が分かれた形になったといえそうです。企業経営に関する既往症の影響についても、以前から傍目(はため)にも見えていたもの、そうではなく見えていなかった潜在的疾患がこの折に表面化したものと、さまざまなパターンの別があったように思います。
コロナ禍で最初の大型倒産としてまっ先に大きく報じられたのが、5月のアパレル大手レナウンの破綻でした。直接の引き金は、10年来の資本提携先である中国資本「山東如意科技集団(以下、山東)」の経営不振による売掛金未回収であり、それがボディーブロー的に効いているところへコロナショックが襲い、資金ショートし破綻に至りました。
さらに元をたどれば、山東に支援を求めた10年の段階で、既に先細り感が出ていたデパート依存の販売体制が指摘されていたにもかかわらず、その後も売上が右肩下がりを続けていました。実際、19年12月期でなおレナウンのデパート向け販売は売上全体の55%を占め、EC売上は3%にすぎないという実情でした。明らかな既往症対処の遅れが、予期せぬコロナ禍の到来により致命傷になったと言えます。
レナウンに限らず、アパレル業界はおしなべて苦境に陥っています。老舗・名門企業の中でもオンワード、三陽商会など、外出自粛による消費者の購買意欲低下のあおりを受け、過去最大規模の赤字を計上するなど、苦しいかじ取りが続いています。
レナウン同様、デパート中心販売からの脱却に遅れていたオンワードは21年2月期に700店舗を閉店すると発表し、所有不動産の売却で何とかつないでいる状況にありますが、立て直しに向けた新たな展望は見えていません。三陽商会は、主力ブランドであった英バーバリーとのライセンス契約が15年に打ち切られて以降、売上が半減。これまた遅々として新たな戦略を見いだせず、コロナ禍のあおりを受けた3〜8月期売上では前年比でさらに半減する大打撃を受け、5期連続赤字は確定的です。いよいよ瀬戸際に追い込まれた感が強く漂っています。
アパレル名門企業たちからの教訓は、実績のある企業でも時代の潮流を甘く見ず、「過去の栄光」を捨て去る勇気を持ちながら、先手を打って変革に対応する、といったところでしょうか。
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