JR東と西武HDが年の瀬に打ち出した“壮大すぎる”プロジェクトの中身ワーケーション推進や沿線活性化(4/4 ページ)

» 2020年12月28日 05時00分 公開
[岸田法眼ITmedia]
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まちづくりに向けた長期的な連携

 両社の資源を生かし、場所や時間にとらわれない働き方や暮らしをサポートするため、MaaS(Mobility as a Service:交通手段による移動を1つのサービスととらえ、シームレスにつなぐこと)を活用したモビリティーサービスの実現を目指す。

 提案するMaasは2つある。

 1つ目は軽井沢駅−軽井沢プリンスホテル−軽井沢エリアの「観光・地域型」だ。観光にも生活にも使える地域の足づくりを進め、利便性の向上を目指す。

 2つ目は品川開発プロジェクト(グローバルゲートウェイ品川)。高輪・品川エリアとプリンスホテルの「都市型」だ。このプロジェクトは、24年頃の街びらきを目指しており、それぞれのエリアにふさわしいサービスの提供を検討する。

 また、連携することで、これまで単独での解決が難しいとされる駅や街(町)の活性化・価値の最大化に取り組み、新たな実現の可能性を検討するという。

沿線活性化に向けた連携

 沿線活性化に向けた連携の目玉といえるのが、高輪ゲートウェイ駅の「高輪ゲートウェイ駅ポケマルシェ」、西武鉄道石神井公園駅の「西武グリーンマルシェ」のコラボレーションだ。21年3月を予定している。

 この企画は、新幹線の速達性を生かし、東北地方から野菜や魚などを直送するものだ。今後、JR東日本と西武鉄道の相互乗換駅(池袋、高田馬場、武蔵境、国分寺、拝島、東飯能)などで、マルシェの共同開催を進めてゆく。

 新幹線を使った商品直送は、在来線しか走行できない貨物列車にとっては脅威となる。近年はドライバーの高齢化・不足などの課題もある。鉄道にシフトすることで、スピーディーで安定的な輸送が期待できる。将来、座席定員が少ない先頭車を荷物室にするなど、新幹線の可能性を広げることにもつながる。

 このほか、JR東日本の品川駅と品川プリンスホテルの連携プロジェクトを立ち上げる。目指すのは品川エリアの価値創造で、グローバルMICE(Meeting、Incentive tour、Conference、Exhibitionの頭文字をとった造語)による地方創生、SDGs(持続可能な開発目標)をテーマとしたスタートアッププログラムの連携など。また、フードロスの削減、傘のシェアリング、一部店舗への非対面オーダー決済端末「TTG-MONSTAR」の導入も予定している。

 今回の包括的連携は、都心でのSTATION WORKの拡大、プリンスホテルの新たな展開、日本各地へのワーケーションの浸透拡大などが中心となる。巨大企業同士が手を組み、“「ワーケーション」という名の働き方改革”を提案した形となる。

西武特急の001系Laviewと10000系ニューレッドアロー

著者プロフィール

岸田法眼

『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人刊)、『bizSPA! フレッシュ』(扶桑社刊)、『AERA dot.』(朝日新聞出版刊)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』(アルファベータブックス刊)がある。


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