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» 2020年12月28日 12時20分 公開

ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る:『鬼滅の刃』歴代興行収入1位、それでも止まらぬ映画業界「未曽有の危機」 (1/5)

『鬼滅の刃』が日本での映画興行収入歴代1位に。ただ、映画業界の危機的状況は続くと筆者は分析。コロナ禍が露見させた業界の課題とは。

[数土直志,ITmedia]

 2020年のエンターテインメント業界の最大のトピックスは、『鬼滅の刃』の一大ブームだろう。10月16日に全国公開した「劇場版 『鬼滅の刃』 無限列車編」は空前の大ヒット、映画興行歴代最高の『千と千尋の神隠し』の316億8000万円を超えて19年ぶりに記録更新する快挙となった。

photo 映画興行収入でついに歴代ランキング1位となった『鬼滅の刃』(東京・池袋)

「ハリウッド大作映画激減」の懸念

 『鬼滅の刃』のヒットは関係者やファンだけにとどまらず、日本のエンターテインメント業界に明るさをもたらした。新型コロナ感染症の広がりで打撃を受けるなかでの記録破りのメガヒットが、エンタメに対する前向きな気持ちを世にもたらしたからだ。影響はエンタメ業界だけに限らない。日本経済新聞の報道によれば、ダイドーコーヒーやくら寿司などの数多くのタイアップは絶好調で、『鬼滅の刃』の経済波及効果は少なくとも2000億円以上とのことだ。

 ただ映画業界の現状をもう一度よく見てみると、『鬼滅の刃』の効果があってなお、中長期的に見ればこれまでの極めて厳しい環境が継続すると考えられる。むしろ同作のヒットを踏まえつつも、こうした危機にどう対応するべきか考えなければいけない時期にある。

 国内の直近の映画興行収入は『鬼滅の刃』の大ヒットもあり、10月、11月は前年同期比で大幅プラスと好調な結果となった。10月以降は『鬼滅の刃』以外にも『新解釈・三國志』を初め興行収入で10億円超え、20億円超えを目指せるヒットも相次いでいる。劇場に観客が戻ってきたことを感じさせる。

 再び新型コロナ感染症が広がる中、今後は劇場の客足の伸び悩みを念頭に置く必要があり楽観はできないが、それでも映画館で映画を観る習慣やビジネスが引き続き維持される見込みは立った。中長期的にみれば、新型コロナ感染症拡大もどこかで終わるだろう。

 自粛期間中でも『今日から俺は!!劇場版』のような大ヒットのあった邦画実写の底力も見えてきたし、邦画アニメの実力も再認識できた。長期間にわたり多数の劇場が休止し、映画興行が壊滅的な状態になっている欧米に比べれば、日本は最悪の状況を食い止めた。

 しかし実際は、中長期的にはむしろ日本の映画業界には暗雲が漂う。特に配給・劇場興行では、欧米の状況がジワジワと日本にも影響を与えそうだ。1つはハリウッドの大作映画の供給が、大幅に減少する懸念である。

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