学生需要は急落したのに、なぜカシオの「電子ピアノ」は売れているのか対前年比120%(5/5 ページ)

» 2020年12月29日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       

テレビの代わりに演奏。弾き始めると夢中に

 カシオ計算機が実施したアンケート(※)によれば、テレビ視聴やネットサーフィンの代わりに自宅で楽器演奏を楽しむ人が増えているそうだ。

※楽器演奏を過去1年で新しく始めた、または1年以上のブランクを経て再開した15〜69歳の男女1030人を対象に調査。調査期間は2020年7月。

 「多くの方はYouTubeを見ながら昔のカンを取り戻したり、演奏方法を習得したりしているようです。弾き始めると徐々にのめり込んでいき、『もっとうまくなりたい』と夢中になれる。演奏が良い気分転換や癒やしになっているという声もよく聞きます」(松田氏)

 同社では購入者の正確な年齢層は把握していないが、当初の戦略どおり、楽器店では20〜40代の購入者が増えているという。加えて、60歳以降で行動力のあるアクティブシニア層にも人気が高い。男女比率は、電子ピアノが女性がやや多め、キーボードは男女同率とのこと。

8月に発売した初心者向け新製品「LK-515」は、光る鍵盤に合わせて弾ける光ナビゲーションを搭載

 「コロナ禍のひとりで熱中できる趣味として、あるいは、ご家族で一緒に演奏する方もいます。先ほどのアンケートでは『この先も演奏を続けたいですか?』という質問に対して、『とても続けたい』が50.8%、『やや続けたい』が35.8%、トータル約90%の人が継続したいとの意思を示しました」(松田氏)

 よく、「ツラいときには歌をうたおう」と聞くが、楽器演奏にも気持ちを前向きにする効果があるのではないか、とも松田氏は指摘した。

 カシオ計算機では、来年以降も引き続き増産体制を維持し、店頭の在庫不足解消を目指すという。パンデミックを見越した事業戦略ではなかったが、一定層のユーザー向けに振り切ったモデルチェンジが思わぬ勝機につながった。

前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.