2020年もいよいよ終わろうとしている。待ちに待った東京オリンピックのだったはずが、新型コロナウイルスの影響によって大会は史上初の延期。コロナに始まりコロナに翻弄され続けた1年だった。
一方で20年は、商品を買い占めて高値でネット転売をする「転売ヤー」が最も目立った年でもある。2月、新型コロナウイルスが国内で感染拡大を続けたため、予防するためのマスクやアルコール消毒製品の転売が横行した。これに対し政府は「国民生活安定緊急措置法」を制定し、マスクやアルコール消毒製品の転売禁止措置をとることになる。「転売ヤーが政府や国会を動かし、法律を作らせた」といっても過言ではない。
法改正によって、一時的にマスクやアルコール消毒製品の転売は強権的に禁止されたものの、その後転売ヤーが目を付けたのはゲーム機だった。新型コロナの感染拡大によって自宅で過ごす人が増えたことによる「巣ごもり需要」が増大。これにより、家から出なくても楽しめる動画コンテンツの視聴や、ゲームへの需要が急増したのだ。
特にゲーム業界においては、この「巣ごもり需要」の影響が顕著に数字として現れた。ニンテンドースイッチ(スイッチ)で3月に任天堂が発売した「あつまれ どうぶつの森」は、発売6週間で全世界1300万本(ダウンロード版含む)の販売を突破。8月には全世界の出荷本数が2000万本を超える「メガヒット」となった。
これを受けて、任天堂の2020年4〜6月期(2020年度第1四半期)連結決算では、売上高が前年同期比108.1%増の約3581億円に。営業利益は、前年同期比427.7%増の約1447億円をたたき出した。この数値はゲームソフトが最も売れる年末商戦期並で、極めて異例のことだ。
コロナによってゲーム業界が好調となった一方で、転売ヤー達の暗躍もあった。需要は増えていたにもかかわらず新型コロナの影響によってスイッチの生産が一時停滞。生産拠点の多くが中国にあったため、一気に品薄となってしまったのだ。これに目を付けた転売ヤー達は、ただでさえ品薄状態のスイッチを買い占め、オークションサイトやフリマサイト、ECサイトに転売した。
そのため希望小売価格2万9980円(税別)のスイッチ本体が、4万円以上で販売されるのも珍しくなかった。消費者が定価でゲーム機を購入する場合は大手家電量販店などで抽選販売に申し込む必要があり、時間と運も必要だった。こうした状況に転売ヤー達がつけ込んだのだ。
当時は4月の緊急事態宣言下でもあり、仕事を一時的に失っていた人も少なくなかった。こうした人が副業として新たに転売ビジネスに手を染めやすい状況下だったとも指摘されている。
その後、生産体制が復活したことなどから、現在ではスイッチ本体は希望小売価格で手に入れられるようになった。
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