PS5、ニンテンドースイッチ、鬼滅グッズ 2020年「転売ヤ―の経済学」1年を振り返る(3/4 ページ)

» 2020年12月29日 15時14分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

転売対策を徹底したものの、品薄状態続くPS5

 劇場版『鬼滅の刃』が公開されてから約3週間後、ブーム絶頂の裏でソニーはある目玉商品を発売した。11月に発売した最新ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」だ。

 プレイステーションシリーズは、実は何度も転売ヤーと戦ってきた歴史がある。特にPS5では転売対策が徹底された。まず、大手家電量販店などで事前の抽選予約などに販売を絞り、発売当日に予約なしでは店頭で買えないようにしたのだ。さらに本人確認を実施し、予約した本人でないと販売できないようにした。それまでにもマスクから『鬼滅』グッズまで続く転売ヤーの暗躍が連日話題になり続けたこともあり、こうした転売ヤーから商品を買わないように呼びかける声も多くあった。

 こうしたかいもあってか、発売直後こそPS5の転売相場は下落がみられた。ところが現在まで国内では品薄状態が続いている。PS5を販売するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)はPS4発売当時以上の生産体制を整えているものの、世界的な需要がPS4当初を上回っているため、現在もPS5通常版は10万円前後でフリマサイトなどで転売されているのが現状だ

phot Ultra HD Blu-rayディスクドライブ搭載モデルが4万9980円、それを搭載しないデジタル・エディションが3万9980円(以下プレスリリースより)

転売規制は非現実的

 こうした相次ぐ転売ビジネスに対して、マスクや消毒液と同様に法的規制を設けるべきだという声も少なくない。ところが、転売事情に詳しいジャーナリストの河村鳴紘氏はこう説明する。

 「実はゲーム機をはじめとした多くの商品には『定価』が存在しません。あるのは『希望小売価格』です。『定価』では販売店への価格の拘束が許される一方、『希望小売価格』には拘束力はありません。あくまで販売店への“お願い”であり、従うか無視するかは販売店の自由です。もし逆らった販売店に対して、メーカー側が出荷停止などの“嫌がらせ”をすると、『価格拘束をした』と見なされ、独占禁止法に抵触してしまいます」

 実はSIEは、01年8月に公正取引委員会に独禁法違反の審決を受けている。初代PSハードとソフト両方の製品に対し、販売店に値引き販売の禁止や、中古販売の禁止を迫っていたことを問題視された形だ。こうした背景もあり、メーカー側が転売業者に強く出られない事情があるという。

phot マスクや消毒液と同様に法的規制を設けるべきだという声も少なくないが……(写真提供:ゲッティイメージズ)

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