新型コロナの感染拡大による「巣ごもり需要」の増大は、ゲーム以外のエンタメ業界にも特需をもたらしている。その最たる例がアニメ『鬼滅の刃』の大ヒットだ。
アニメ『鬼滅の刃』は今でこそ社会現象になっているものの、最初にテレビ放送されたのは19年4〜9月で、もう1年以上前になる。『週刊少年ジャンプ』の連載作品であり、一定数の原作ファンがいたことと、映像の質の高さから当初から話題となっていたものの、深夜時間帯の放送だったこともあり、コロナ禍以前は「知る人ぞ知る名作」という位置付けだった。
ところが10月からの劇場アニメ上映開始に先立ち、アニメの本編をまとめた総集編がゴールデンタイムに繰り返し放送したことを契機に、瞬く間に子どもから高齢の世代まで幅広い年代に支持されるようになったのだ。もちろんこれ以前にも、「巣ごもり」の影響によって、自宅でアマゾンプライムをはじめとするオンデマンド配信で視聴した人も少なくなかった。
その後、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を公開すると、公開73日間で興行収入が324億円に達し、「千と千尋の神隠し」の316億円を抜いて国内で上映した映画の歴代1位になる社会現象となっている。こうした「鬼滅ブーム」の動きに対しても、転売ヤーは機敏に立ち回ったのだ。ブームが過熱するにしたがい、多くの企業が『鬼滅』とタイアップした商品を販売し始めた。転売ヤーはこうしたコラボ商品の買い占めに走るようになる。
例えば大手飲料メーカーのダイドーが『鬼滅の刃」のキャラクターをデザインしたコラボ缶コーヒーを10月に発売したところ、発売3週間弱で5000万本を売り上げた。
これに続く形で、大手菓子メーカーのロッテも、自社の看板チョコレート菓子「ビックリマンチョコ」と『鬼滅の刃』をコラボさせた商品「鬼滅の刃マンチョコ」を全国のコンビニなどで11月に発売。またたく間に品薄となった。
転売ヤー達はこうした商品を箱単位で買い占め、それをそのまま箱ごと高値で転売するだけでなく、さらに悪質な行為も報じられた。「鬼滅の刃マンチョコ」に同封している特典シールだけを抜き取り、それを転売することによってさらなる利益を得ていたのだ。
全24種類をコンプリートしたシールを、フリマサイトで一時10万円以上の価格で出品していた。コンビニなどでの販売価格が1個100円であることを考えると、驚くべき暴利といえる。そのまま箱ごと転売するよりも高い利益率が見込めるため、「本体」といえるウエハース菓子を、商品を購入したとみられるコンビニ店のごみ箱に、大量に捨てられる事件も起こった。
また、11月からJR九州が『鬼滅』とコラボした「SL鬼滅の刃」を走らせ始めると、この指定席券も転売ヤーの餌食となる。指定席券は販売を開始した瞬間まさに「秒」で売り切れ、熊本博多駅間で840円(税込)の指定席券が、50倍近い4万円以上で取引されたのだ。テレビ局はバラエティー番組などによって「鬼滅」の話題を繰り返し取り上げていた。そして転売行為は、メディアなどですぐさま問題視されるようになる。だがそれもむなしく、こうした『鬼滅』グッズは今も品薄が続く。
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