フィンテックで変わる財務

2020年のキャッシュレス業界 けん引したのは結局クレカ(2/5 ページ)

» 2020年12月31日 07時00分 公開

クレジットカードが拓くキャッシュレス比率40%の世界

 まだ20年のデータが出そろっていない段階ではあるものの、18年以降にキャッシュレス決済比率を押し上げたのはクレジットカードの利用増にある。18年といえば多数のコード決済事業者が市場に参入し、同年末にはPayPayが100億円規模の大規模キャンペーンを立ち上げ、いわゆるキャンペーン合戦によるシェアの奪い合いが激増したタイミングでもある。

 だが20年を通じて小売店のキャッシュレス対応に関わった関係者らのヒアリングを多数行っていた範囲で、「一番利用が多いPayPayでさえ全キャッシュレス決済の1割にも満たない」という声を聞いている。

 複数の関係者らの話によれば、PayPayの市場シェアはコード決済全体の5〜6割程度とのことで、仮に最大値であったとしてもキャッシュレス決済全体に占めるコード決済のシェアは1割前後と考えられる。市場を広げ、認知を高める効果はある程度あったと考えるが、日本におけるキャッシュレス決済をドライブしているのはやはりクレジットカードだ。

 19年10月から20年6月にかけては、中小店舗を対象とした政府の2〜5%ポイント還元施策が実施されており、これがキャッシュレス決済利用促進につながったという意見がある。これはある側面で正しく、別の側面では違うというのが筆者の見解だ。

 重要なのは、このポイント還元施策に前後して中小店舗でのキャッシュレス機器導入支援策が実施されており、やはりこれを機会に顧客を取り込もうと初めてクレジットカードやコード決済に対応した事業者が増えたことだろう。鶏と卵論争ではあるが、使えるところが少なければ人々は使うモチベーションが起こりにくい。ゆえにクレジットカードを普段使いできる場所が増えたことが大きいと考える。

Visa LINE Payカードの五輪限定デザイン。現在LINE Payはカード事業を強化している

 興味深いのは、20年に入った時点で、コード決済事業者でも楽天とLINEは早々にキャンペーン合戦から撤退し、同社らが発行するクレジットカードを利用する顧客を優遇する施策へと切り替えている。つまり自社発行クレジットカードを使えば使うほどポイント還元で有利になるという仕組みだ。

 コード決済事業者でも、PayPayとメルペイを除く各社はクレジットカード、あるいはそれに類するもの(ブランドプリペイドカード)を発行しており、これらとポイントプログラムを組み合わせた独自の経済圏を組み立てている。つまりPayPayが伸び続ける一方で、それ以外のコード決済事業者の多くはカードビジネスを主体にし始めている可能性が高い。

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