次に、具体的な重点対象を超訳したものが下図だ。「次世代型の太陽電池とカーボンリサイクルが対象」だと言っている。ただし、後に手段の部分で原子力発電が出てくるのにここで触れていないのは、原発問題はデリケートなので、あんまり言及したくないのだと思われる。
菅首相の所信表明演説から具体的なプラン
では、どうやってそれを実現していくのかといえば、ここでは、再生可能エネルギーと原子力を挙げていて、予防線として「安全優先」と断り書きがわざわざ付けてある。加えて「石炭火力政策を抜本的に転換」との言い回しで、「廃止」とハッキリは言わずに言葉を濁していることが分かる。
ひとつ疑義があるのは、「50年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわちカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」というのであれば、石炭を完全撤廃するだけでは無理で、石油と天然ガスも止めないと、冒頭に掲げた目標は物理的に達成できないにもかかわらず、そこも触れていない。もちろんカーボンリサイクル策としてCO2回収設備を付けた火力発電であれば、カーボンニュートラルは可能になるのだろうが、コストの問題が解決しておらず、明言できないことがうかがわれる。
カーボンニュートラルも、環境技術による成長戦略も、基本的にはポジティブに受け止めていい話だと思う。しかし、50年のカーボンニュートラル宣言については、明確なルートマップができているようには聞こえない。
具体的にいえば、石炭は完全撤廃なのか、石油と天然ガスはどう扱うのか。菅首相は、カーボンニュートラルを政策の一丁目一番地と位置づけてはいるが、要するに本質は「50年にカーボンニュートラルにします」と言っているだけで、それについて具体的なプランが無い。そしてそもそも自動車については何も触れていない。小泉環境大臣はどうだろうか?
- 新燃費規程 WLTCがドライバビリティを左右する
ここ最近よく聞かれるのが、「最近の新型車ってどうしてアイドルストップ機構が付いてないの?」という質問だ。全部が全部装備しなくなったわけではないが、一時のように当たり前に装備している状況でなくなったのは確かだ。それに対してはこう答えている。「燃費の基準になる測定方法が変わったから」。
- ようやくHVの再評価を決めた中国
中国での環境規制に見直しが入る。EV/FCVへの転換をやれる限り実行してみた結果として、見込みが甘かったことが分かった。そこでもう一度CO2を効率的に削減できる方法を見直した結果、当面のブリッジとしてHVを再評価する動きになった。今後10年はHVが主流の時代が続くだろう。
- 暴走が止まらないヨーロッパ
英政府は、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHEV)も含め、2035年に禁止すると発表した。欧州の主要国はすでに2040年前後を目処に、内燃機関の新車販売を禁止する方向を打ち出している。地球環境を本当に心配し、より素早くCO2削減を進めようとするならば、理想主義に引きずられて「いかなる場合もゼロエミッション」ではなく、HVなども含めて普及させる方が重要ではないか。
- EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
- 自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
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