クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ガソリン車禁止の真実(ファクト編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

» 2021年01月01日 05時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 まずは会見の抜き出しから挙げよう。面倒ならまた超訳から読んでも話は分かる。

12月11日 小泉進次郎環境大臣会見(抜粋)

 環境省として2030年に地域での再エネ倍増を目指す脱炭素政策パッケージに集中的に取り組みます。今日はその端緒となる取組、「再エネ×電動車」、これについても3点御紹介したいと思います。

 1点目、これは地方環境事務所を含めて環境省が率先実行します。再エネ導入については、環境省は既に2030年までのRE100、再生可能エネルギー100%を宣言して、各省庁に先駆けて取組を進めています。今回更に率先実行を進めるべく、2030年までにEV100に向けて取り組みます。

 2点目、この2点目は地方支分部局を含め、政府全体で率先実行します。先日、河野規制改革担当大臣とともに、各府省庁の施設において令和3年度の電力について再エネ比率30%以上の電力調達を依頼しました。さらに、地球温暖化対策推進法に基づく政府実行計画を見直し、再エネ電力や電動車の調達を含め、対策を大幅に強化する予定です。

 そして3点目、これは民間での普及です。今回、補正予算には脱炭素化に不可欠なEV、プラグインハイブリッド、PHEVですね、そしてFCV、そして再エネ調達をセットで導入する場合の集中的な支援を盛り込むこととしています。これは、今日夕方に閣議がありますので、その後に詳細はお話をしますが、単に車両の導入にとどまらず、個人向けに再エネ電力とセットで導入する取り組みを支援することは我が国初であり、国民の皆さまには、この予算を有効に活用していただきたいと思います。

〜中略〜

 これは環境省が調達をする自動車、公用車ですね、これを2030年までにEV、FCV、プラグインハイブリッド、この3つにする。ハイブリッドは含まない。これがEVなので。今さまざまな報道が出ています。例えば東京が2030年以降はガソリン車を販売禁止、そんな話も出ていますが、環境省としてはガソリン車の調達を2030年以降はしない、そういったところです。

 ここから超訳だ。「環境省はRE100とEV100をやります」。RE100とは、企業が使用する電力の全てを再生可能エネルギーだけでまかなうということを指し、EV100は、企業が生産や営業に使う全ての車両を電気自動車(EV)にすることを目指すものだ。

 ここでキーになるのは「環境省は」の部分で、これが誤読されやすい。「監督官庁としての環境省が全ての企業にこれを義務づける」とも読めるのだが、注意深く読むと「率先実行を進めるべく」という言葉から、これが「環境省で使うクルマは」であることが分かる。さらにいえば「中略」以降では、それをさらに明確に言っている。

 RE100もEV100も環境省が省の調達分だけでやるのなら簡単な話だ。というよりむしろ今までやっていなかったのかという話でもあるし、それで会見を開くのかと思うほど些末(さまつ)である。政府が目標に掲げた、「攻略の糸口さえまだつかめぬカーボンニュートラル」に対して、「千里の道も一歩から」感が極めて強い。アドバルーンとしての効果はあるかもしれないが、カーボンニュートラルどころか、わが国のCO2削減への寄与は測定不可能なレベルである。

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