なぜ「すしざんまい」は、マグロの初競りを自粛したのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2021年01月07日 09時48分 公開
[窪田順生ITmedia]

市場関係者への「配慮」

 このように市場関係者が心身ともに疲弊している大変な時期に、これまで一部の方たちをイライラさせてきた「過剰な競争」ができるだろうか。できるわけがない。

 つまり、「すしざんまい」の「初競り自粛」は、自粛ムードあふれる世間の顔色をうかがったというよりも、コロナで疲弊する市場関係者への「配慮」という可能性があるのだ。

 そこに加えて、「配慮」ということで言えば、「同業者への配慮」もあったのではないかと個人的に思っている。木村社長が、「自粛ムードなので、外食は」と述べたように今、外食産業のムードはかなり暗い。

 帝国データバンクの調査によれば、20年1〜11月の飲食店の倒産件数は736件となり通年では過去最多。その中で居酒屋が多いことは言うまでもないが、前年に比べてかなり増えているのが、「すしざんまい」にとって、非常に身近な業態である「日本料理店」と「すし店」だ。昨年11月時点で「日本料理店」は75件の倒産で過去最多、「すし店」も34件で前年を大きく上回っている。

飲食店の倒産件数の推移(出典:帝国データバンク)

 このように同業者がバタバタと倒れ、市場関係者もピリピリしている中で、いつものように高値でマグロを競り落とし、テレビカメラの前で解体ショーを行い、お笑い芸人と一緒に木村社長が「すしざんまい」なんて感じでいつものポーズをしたらどうなるか。

 「こっちが大変な思いをしているのにお気楽だな」という「嫉妬」が向けられるかもしれない。「ウチが潰れそうなのは、こういう店に客を取られているからだ」と「逆恨み」されるかもしれない。最悪、裏で足を引っ張られるようなことをされるかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.