「そんなの考えすぎだ」と笑うかもしれないが、あまり表沙汰にならないだけで、ビジネスの世界ではこういうことがよくある。筆者も報道対策アドバイザーとして、企業を執拗(しつよう)に攻撃してくる人のバックグラウンドや、ネットやSNSでの誹謗中傷、風評の出所を調べていくと、「同業者」にたどりつくことが圧倒的に多い。取引先、下請け、ライバル会社はもちろん、その企業から転職した元社員というケースも珍しくないのだ。
もちろん、単なる一消費者や、義憤にかられた「正義の人」が企業を攻撃するケースもある。しかし、寝る間を惜しんで悪口を書き込んだり、明らかに常軌を逸したような罵詈雑言を浴びせたりする人は、その企業に対して何か「特別な思い入れ」があるからだ。その企業によって不利益を被ったとか、競争に敗れたとか、自分の仕事が脅かされたとか。つまり、「同業者」である。
だから、昨年末、DHCの会長がライバルであるサントリーを執拗に叩いた文書を公表したことが大きな話題になったが、筆者からすれば特に驚くような話ではない。自分の身元を明かさずに裏で似たようなことを仕掛けている企業は山ほど存在しているのだ。
いずれにせよ、多くの経営者は「同業者を敵にまわすことの」の恐ろしさをよく分かっている。「すしざんまい」を一代でここまで大きくした木村社長も、それを分からないはずがない。だからこその「初競り自粛」ではなかったか。
もちろん、これは筆者の勝手な想像に過ぎないが、もしそうだとしたら、21年の日本経済の先行きはかなり暗い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング