常識にとらわれない! 逆張りの欧米スタートアップ3社非・王道のビジネスモデル(2/4 ページ)

» 2021年01月15日 08時21分 公開
[中山悠介ITmedia]

デジタル調剤薬局を目指すAlto

(1)Alto

  • 提供サービス:デジタル調剤薬局
  • 地域:米国サンフランシスコ市
  • 設立:2015年
  • 投資家:DST Global、Softbank Vision Fund 2など

 事業の立ち上げ期には大きな固定資産を持たないアセットライトな運営に徹することは、インターネット関連新規事業の一つの定石となっています。実際に、さまざまな業種で生まれている領域特化ECの多くはオンライン上での取組みに特化し、製造、物流、店舗対応などのハードアセットを保有しないビジネスモデルを志向しています。

 これに対し、Altoは物流拠点を自前で有し、かつ配達員や調剤技師なども自社雇用するなど、リアルとオンラインの両面において新時代のデジタル調剤薬局を目指しています。

 Altoが提供するWeb/アプリサービスは患者と医師の両サイドをつなぐプラットフォーム。患者はアプリ上で医師や薬剤師に医療相談をすることができ、実際に処方を受けたのちは処方薬の配達スケジュール設定や服用した薬剤の管理が可能です。一方、医師の視点では、自分をかかりつけ医とする患者の管理や服用薬のチェックが可能となります。

 Altoがユニークであるのは、患者と医師の単なるマッチングプラットフォームではなく、URAC(米国の非営利の医療機関認証組織)で認証された認証薬局であることです。これは各種文献からの想像に過ぎませんが、恐らくAltoのマネタイズポイントは、一般的なオンラインサービス事業者が好むユーザーからのサービス利用料や、デリバリー手数料、広告収入などに頼るのではなく、伝統的な調剤薬局と同様の調剤売上がメインです。また、物流拠点、配送網も自前で保有しているため、一般的なオンラインサービス事業者に比べて高固定費であり、地理的な視点での拡張性にも制約があるはずです。

 あくまで患者にとっての医療プロセスの最適化を目指し、リスクを取りつつもオンラインとリアルの両面にまたがって事業展開をしているAltoの取組みは、このパンデミック化においては医療業界だけでなくさまざまな異業種からの注目が高まってくるかもしれません。

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