サイゼ社長の「ふざけんな」は当然 時短要請と協力金が批判されまくるワケ長浜淳之介のトレンドアンテナ(7/7 ページ)

» 2021年01月20日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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どんちゃん騒ぎをする店がどれほどあるのか

 ほとんどの人が1人で食べに行く、牛丼、天丼、カレー、セルフうどん、立ち食いそば、ラーメンのような店で、飛沫が飛び交って感染源になるとは考えにくい。そういった店にまで時短を求めるのは、やり過ぎではないか。

 ファミレス、カフェ、回転寿司、ファミリー焼肉のような業態も、ほとんどが4人までの利用で、皆で深酒してどんちゃん騒ぎをするような店と思えない。

 20年末、政府は5人以上の会食は飛沫拡散のリスクが高くなるとして、会食は4人までにするよう呼び掛けていた。それなら、5人以上のグループは入れないよう、飲食店に人数制限を呼び掛ければいいだけのように思える。

 飲食店向け予約システムを手掛けるテーブルチェックは1月7〜10日、1都3県の飲食関係者115人を対象にしたインターネット調査を行った。すると、「時短要請に応じる」と回答したのは全体の87.9%だった。「休業する」が6.0%だったので、合わせて93.9%になる。「応じない」は0.9%で、残りは「検討中」としていた。

 実際、筆者の体感としても、午後8時以降に開いている店はとても少ない。

 「当然、時短に協力する。デリバリー、テークアウトはそれぞれの販社が業態のニーズに合わせて考える」(コロワイド・広報)というのが、外食の標準的な対応ではないだろうか。

 しかし、都心店・大型店が苦しくなり、郊外店・小型店が有利になるという格差が、どんどん開いてきている。都心店・大型店は限界に近づいており、外食崩壊はもう間近だ。

 政府は、緊急事態の要請に従わない企業を処罰するための法整備を進めている。要請する企業に対して、政府の支援を義務付けるという内容もセットにしている。

 しかし、支援の額に関して、現在のように不公平な状況が続けば、罰せられても営業を継続する事業者が出てくる。外食の大倒産時代を招き、失業者が街にあふれ、アルバイト先が消失する可能性もある。大学・専門学校の退学者も増えるだろう。しかも、世界で人気の「和食」産業の担い手を大量に失い、日本の文化的価値も低下してしまうのだ。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。


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