このように、ファッション業界でメジャーになりつつあるアップサイクルだが、他の業界でも盛り上がりを見せている。
そのひとつが、フード業界だ。ファッション業界と同じく廃棄物の問題を抱えるフード業界は、かなり前からアップサイクルの取り組みを行なってきた。ところが、アップサイクルが「クールなトレンド」として注目され始めたのは、ごく最近になってからだ。
実は、食品廃棄物のビジネスは19年に4670億ドルに達し、今後10年で年平均成長率5%が見込まれる巨大市場として、ビジネス参入が活発になっている。
その中でも、ビジネスパーソンの興味を引きそうな例が、ビールを醸造する過程で出る穀物の搾りかすをアップサイクルしたビジネスだ。
ビールの醸造過程で使用される穀物は、世界全体で年間900万トンにもなるが、その使用済み穀物の多くは家畜の飼料として再利用されてきた。それでも、すべてを再利用することは難しく、およそ10%ほどは廃棄処分されている。
ところが、新たに開発した使用済み穀物の有効利用が、意外なブームに乗って好調だという。そのブームというのは、過去に記事で取り上げたこともある「植物性プロテイン」人気のことだ。健康志向の高まりから、植物由来の原材料を加工して作られる食品の需要が伸びているのだ(関連記事)。
こうしたことから、ビール世界最大手のAnheuser Busch InBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)が支援しているサプライヤーの「EverGrain」は、醸造過程で出る使用済み穀物を機能性成分としてフード業界に売り込んでいるという。
同社は、年間140万トンもの使用済み穀物を2種類の機能性成分にアップサイクルしている。そのうちの一つ「EverPro」は非常に溶けやすいため、乳製品や飲料に使用するのに適した原材料となっている。成分の80%がプロテインで、食物繊維が豊富に含まれているのが特徴だ。
また、もう一つの「EverVita」は、高タンパク質の大麦粉として、焼き菓子やパスタなどに適しているようだ。
醸造過程で出る使用済み穀物の主成分は大麦で、大豆など他の植物性プロテインと違い、独特の風味や苦味が少ないため口当たりがいいという。また、大麦のプロテインは溶けやすいことから、見た目やテクスチャーを変えないで栄養素を足すのに使いやすいようだ。
つまり、消費者が求めている、栄養価が高く環境に優しい製品を開発しようとしている製造業者にとって、食品加工が容易で便利な原材料となっている。
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