2500人が販売待ち! なぜ1個500円の高級トイレットペーパーが売れるのか製造が追いつかない(3/6 ページ)

» 2021年01月30日 07時51分 公開
[小林香織ITmedia]

非効率な工程が生みだす別格のやわらかさ

同社初の女性社長となった森澤雅代氏

 家庭用のトイレットペーパーは多くが12ロール入り、手頃な製品だと1パック300円前後の低価格帯で販売している。消臭機能やふんわり仕上げなど機能性に比例して価格が上がるが、長持ちするロングタイプを除けば1000円を超えるものは少ない。

 望月製紙が販売する高級トイレットペーパーは、一般的な製品と比べて価格帯は10倍〜20倍以上。これほどまでに価格差が開く理由は、原料と製造工程のこだわりにあるという。

 トイレットペーパーの主な原料は木から作られたパルプで、世の中には100種類以上のパルプが存在する。同社は水質のよい湖に囲まれて育った北米の純粋パルプを使用。これは、繊維が細長く強いという性質がありながら、やわらかさも併せ持つ。紙をすく製造工程で大量に使用する水は、過去に3年連続で全国の河川水質ランキングで1位に選ばれた実績がある県内の仁淀川の水を引いている。

 そして、最も品質を左右するのが、原料が持つ利点を最大限に引き出す製造工程だ。大量生産されている低価格帯の製品は、パルプを強く叩解(こうかい:切りほぐしたり押しつぶしたりする作業のこと)し、機械を高速回転させて紙をすくのが一般的。効率的ではあるものの、その代わりにパルプのよさが犠牲となり、紙が強く引っ張られることで表面がツルツルの硬い仕上がりになってしまう。

大規模な機械を使い、紙を丁寧に巻き取っていく

 一方、同社ではパルプが持つ繊維の長さややわらかさをそのまま生かすため叩解を最小限にとどめ、紙をすく工程では、なるべく力を加えずにやさしく巻き取っている。

 「日々変わる気温と湿度に合わせて微妙な調整を繰り返しながら、じっくりと時間をかけて丁寧に製造する。業界の常識とは真逆ともいえる非効率極まりない製造方法ですが、この工程を経なければ究極のやわらかさは出せないんです」(森澤氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.