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ウェアラブルデバイスへの応用も レーザーで網膜に映像投影、マザーズ上場のQDレーザ(1/2 ページ)

» 2021年02月05日 08時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 半導体レーザーを取り扱うベンチャー企業、QDレーザが2月5日、東証マザーズに上場した。富士通研究所からスピンオフし、2006年に設立された企業だ。半導体レーザーの分野では高い技術を持つが、直近2020年3月期の決算は売上高7億5600万円に対し、12億2500万円の最終赤字となっている。

 今回のIPOでは30億円弱を調達する。その使い道は、新たに本格参入する「網膜にレーザーで映像を投影」するデバイスの事業拡大だ。メガネなどに付いたカメラで撮った映像を、網膜をスクリーンにして直接投影するというもの。メガネで補正できない視力を持つ人でも、0.8相当の視力を実現できるという。

網膜に映像を直接投影するデバイス「RETISSAシリーズ」。民生品ではカメラはメガネに付いておらず、外部からHDMI端子で入力する。ECサイトで購入できるほか、全国のメガネ店や家電量販店で体験コーナーも用意している

 角膜や水晶体に頼らないため、不正乱視の人でも物を見ることができる。眼は通常中央部分しかピントが合わないが、網膜の周辺部分に映像を投影することで、周辺でもピントが合った映像を見ることができる。

 民生用のデバイスは、現在は510台ほどを量産し価格は24万8000円(税抜)。今回、上場資金を用いて量産規模を拡大する。「将来的には量産で原価を5万円程度に抑え、販売価格10万円以下を目指す。最終的には補聴器の平均単価と同じ6万円にしてきたい」と、同社の菅原充社長は話す。

 工場を持たないファブレス体制を取っており、医療向けはミネビアミツミが、民生向けはオーディオテクニカが製造する。同社は、医療だけでも日米欧だけで9000億円を超える潜在市場規模があると見ており、量産を急ぐ。

QDレーザの菅原充社長(QDレーザ提供)
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