いまやAIといえば、ディープラーニング(深層学習)に代表される機械学習のことを指す。猫の画像を見分けたり、文章の意図を分析したりと応用分野は幅広いが、これらは与えられたデータを元に、分類し、予測する活用法だ。
もう一つのディープラーニングの応用例が、深層強化学習と呼ばれるもの。ある問題を、コンピュータ自身に試行錯誤させ、数式では解けなかった問題の最適解を導き出す。有名な例としては、Google傘下の英DeepMindが開発したAlphaGoがある。囲碁のルールをもとに、自分自身との対決を重ねることで最適な打ち方を学び、人間が見つけることのできなかった戦略を編み出した。
この深層強化学習を使い、ビルの揺れを制御する仕組みが開発された。AIソリューションの開発を行うLaboro.AI(東京都中央区)は、大林組と共同で建設物の振動を制御するAI開発を実施。実際の建造物での実験で、従来の振動制御を上回る結果を出した。
地震大国の日本では、高層ビルの揺れを抑える技術が発展してきた。「固くして揺れないようにするのが耐震、地面から浮かして、揺れが伝わらないようにするのが免震。一方で重りを動かして、揺れを制御するのが制振」だと、Laboro.AIの椎橋徹夫CEOは説明する。
地震については免震で対応できるが、課題になってきているのが風揺れだ。超高層ビルは風で揺れるが、これは免震では対応できず、制振制御が必要になる。
制振にも種類があり、ビルの屋上などに重り(マスダンパー)を設置し、揺れに合わせて受動的に動くのがパッシブ制振だ。一方、振動をセンサーで感知し、重りを能動的に動かして揺れを抑える技術をアクティブ制振という。今回は、アクティブ制振でどう重りを動かしたら、最も効率的に揺れを抑えられるかを、深層強化学習を用いて研究してきた。
「自然に相殺するように重り揺らすところから一歩踏み込んで、重りの揺らし方をモーターで制御すれば、さらにうまく揺れを抑えられる。ダンバーのおもりを軽くしたり、ストロークを短くしたりするには、能動的に賢く揺らすのが重要になる」と椎橋氏は狙いを話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング